シチュエート(Situate)とスコープホイール | フューチャーズ・デザイン with Bespoke
ここでは、シグナルのスキャンの前に、最初に行うべきシチュエート(Situate)について説明します。
シグナルのスキャンを行う前に、シチュエートフェーズで活動の対象と活動フィールドを定義し、自分たちの立ち位置を把握してリサーチの範囲を決めます。
未来を描き出す上で何を理解しておくべきかを明確にし、私たちが知るべきことがどの範囲となるのかを、スコープホイールを用いて解明し限定していきます。
なお、「理解」には種類があります。
「既知の既知」 | 自分が知っていると自分で分かっていること。これはプロジェクトなどに取り組む際にすでに「理解している」と自分で理解できている対象を意味します。
図の白い部分です。
「既知の未知」 | 自分が知らないと自分で分かっている対象です。たとえば私の場合は 「量子」です。「量子コンピュータ」など、「従来とは違う概念のメカニズム」ということしか知りません。これが「知るべきこと」なのかは僕には分かりません。でも「何かつながりがありそうだ」と感じたら、ぜひ調べてみて欲しいのです。
既知の未知について積極的にリサーチすることが、未来の可能性を大いに拡げることにつながっていくからです。
「未知の未知」 | リサーチを始める際には。「自分が知らないということさえ知らない対象」のことを常に心に留めておいてください。
このスコープホイールの場合、メイントピックが中心に置かれて、周囲に 「新技術」「ビジネス・コラボレーション」 「職場環境」「ワイルドカード」という4つのドメインが配置されています。
このようにリサーチ対象を構造化して、その中に必要と思われるサブトピックを書き出していきます。テーマに応じて、ドメインやその数は変更されるでしょう。
中心のメイントピックを3重の円が囲んでいます。1つ目がコア、次が隣接、そして周辺です。
メイントピックの未来との関連性の強さに合わせてキーワード(サブトピック)を配置していきます。
スキャンはこれらのキーワードについて調べていく作業となります。
コアに置かれているキーワードはメイントピックに近いので、そこに集中してしまいがちですが、プロジェクトのタイプによっては隣接や周辺に重きを置き、先進的なトピックを選ぶケースもあります。変化も、その方がより先鋭的なものとなります。
なお、ドメインの設定方法に「絶対的な正解」は存在しません。このツールの重要な役割はプロセスをスタートさせることですから、そこにこだわる必要はありません。
ただし、個人的には、スコープホイールのドメインのおすすめは「STEEPV」です。STEEPVは、以下の頭文字を取ったものです。
S | ソーシャル。人口や世帯収入、男女比など。
T | テクノロジー。新しいデバイスや新素材など。
E | 環境。気候危機や空間を構成する要素など。
E | 経済。GDPや流通システムなどの経済関連。
P | 政治。戦争や人種差別など。
V | 価値観。ヴィーガニズムやフェミニズム、ブラック・ライヴズ・マターやハッシュタグなど。
他にもドメインの設定方法にはいろいろとありますが、ポイントは、焦点を変化させながらリサーチを行えるようにすることです。
なぜなら、多くの人はテクノロジーに関するトピックにリサーチを集中してしまう傾向があるからです。これは未来を考える際に陥りがちな罠で、つい新しいデバイスに目や頭が行きがちになります。
でも実際には、新たな価値観やコラボレーションの方法などが未来を形作ることが多いのが実態です。
その点を考慮しても、包括的で広い視点を与えてくれるSTEEPVはオススメのスコープホイールのドメインであり、僕たちも多くの場合でSTEEPVを用いています。構造化もしやすいですしね。