アシカとLGBTとジャニスとホームレス。
Think 2019というIBMの一年で一番大きなカンファレンスに参加してきました。仕事上の主な役割は、現地で発表されるIoT関連のセッションのレポートの作成です。
というわけで、仕事上のレポート記事、ぜひ読んでください。これからまだ数本掲載の予定です。
Watson IoTブログ
しかーし、生まれて初めてのサンフランシスコだし、アメリカ自体も3年ぶり。 そして、直接的な仕事はもちろん重要ですが、出張に行ったら自分自身の幅を広げるようなものを見たり聞いたり体験するのも絶対に大切。そして当然、自分の知見としてそれらを取り込んでアップデートしていくのも。
というわけで、感心したことや自分が感じた違和感などを書いてみます。
■ ピア39の野生のアシカたち
泊まっていたのは観光客にも人気のフィッシャーマンズ・ワーフ地区のZepherという、小ぎれいにリノベートされたデザイナーズホテルでした。
廊下の音が響きがちかな? と思うくらいで、それ以外はほとんど気になる点もなく、コーヒーサーバーやたくさんの充電用アウトレットなど、気の利いた嬉しいサービスがたくさんあるホテルでした。
ホテルから5分歩いたところに、飲食店やお土産物屋さん、そして水族館などが集まったピア39というエリアがありました。その一番奥の海寄りのところに、野生のアシカが集まっている姿を間近に見えるスポットが。
その距離およそ15メートルくらいかな。
どうやら「行っても見当たらなかった」という人もいるようなのですが、海寄りの突端についたら耳を済ましてください。きっと左の方からウォゥウォゥという声が聞こえてきます。そっちに向かって15メートルも歩くと、観察スポットがあります。
近くのお店の人に聞いてみたところ、たいていいつも何匹かは吠えているし、24時間ほぼ年中無休だそうです。
上の写真では分かりにくいかな? だいたい100匹くらいはいるかと思います(時期にもよるようですが)。
基本、彼らひたすら寝てます。
先ほど書いたように吠えてるのが何匹か。それからただ胸を張ってジーっと上空を見てるのも何匹か。(これ、ペンギンの群れにも必ずいる気がします。胸張って上向いているの。海の哺乳類の特性?)
そして、2月の寒さのせいか、結構な頻度でクシャミしているのがいました。
すぐ真横に寝ているアシカを気にすることなく、口や鼻から飛沫を飛ばしまくりながら、クシュンクシュンクシュンと3回は続ける個体が多かった気がします。
私は次の予定もあり、10分くらいで引き上げてしまいましたが、平和な時間を過ごせますよ。
■ LGBTのシンボルタウン「カストロ」
アシカ見物の後、クラムチャウダーで有名なBowdenで食事を済ませ、ピア39の2階にあるツーリスト・インフォメーションセンターで「カストロ」への行き方を教えてもらい向かいました(「ストリートカーFなら乗り換えなしで行けるわよ。それに、チケット購入後2時間以内なら次の場所への移動にも使えるわよ!」。とても親切にお得な行き方を教えてもらえました)。
カストロはLGBTコミュニティが市民権を得る過程で大きな役割を果たした街で、私は10年ほど前にショーン・ペン主演の映画『ミルク』を観てその存在を知りました。
たしかに、ストリートにはLGBTを表す、あるいは支援するレインボーの旗があちこちに掲げられていて、目ぬき通りにはゲイタウンを象徴するようなショップや劇場などが並んでいました。
ただ、ちょっと時間が足りなすぎたかな。何軒かお店も覗いてみたものの「欲しい」と思うようなグッズなどには出会えず、GLBT歴史博物館(そう、この順番です)も時間がなかったので中には入りませんでした。
次回、チャンスがあれば平日のお昼じゃなくて、もうちょっと遅い時間に遊びに行ってみたいです。
■ ヘイト・アシュベリーのジャニスのアパート
カストロからストリートカーFで少しダウンタウン寄りに戻り、そこから7番の路線バスでヘイトに向かいます(購入後2時間以内なら、最初に買ったストリートカーのチケットでここまで全部乗れます。無くさないように!)。
ヘイトのバス停で降りると、すぐに「ああなるほど。ここがフラワームーブメントの聖地か」という感じです。
壁のあちこちに60年代を感じさせるグラフィティ・アート。古着屋や中古レコード屋が並ぶ中でブルーズを唄うストリート・ミュージシャン。紫のけむりを燻らせて四つ角に座り込むヒッピーたち。
ブラブラと歩いているうちに、なんだか私もラブ&ピースな気分になってきました。
…というのはちょっと嘘。実際には、なんだかどこかに違和感を感じていました。うーん、なんだろう。具体的にどことは言えないんですが、「観光地化」された要素を感じる瞬間が少なくなかったんですよね。
ただ、ここを訪問した1番の目的であるジャニス・ジョプリンが住んでいたアパート前に来たときは、ちょっと感傷的な気分になりました。
ジャニスありがとう。あなたのおかげでおれの人生はカラフルなものになりました。
■ あちこちそちこちのホームレス
この日だけではなく、イベントの合間を縫って街中のレストランやワインバーなどにも行ったのですが、まあ昼も夜も目に付くのはホームレスの人たちの多さです。
ダウンタウンの中心地でも、人通りが多い地区の交差点付近には、ほぼ必ずと言っていいほど一人はホームレスの人がいるという感じでしょうか。
先ほど書いたストリートカーFに乗り、ダウンタウンの中心地からカストロにたどり着くまでの30分ほどの間には、とりわけ多くのホームレスが集まっているスポットが3カ所ほどありました。
そして車窓の景色だけではなく、ストリートカーや路線バスには、ホームレスの人が結構な頻度で乗ってきます(私は都合5回ほど乗りましたが、そのうち3回は彼らが乗ってきました)。
無賃乗車で数ブロック乗っていくことを、運転手も乗客も咎めることはありません。そして体の不自由な人も少なくなく、他の乗客がその乗降を手伝うことも…。
なかなか不思議な光景で、今もまだ頭の中で整理できていません。
ところで、「ホームレスの人びと」と言ってもいろんなタイプの人がいますが、わりとよく目についたのが犬を飼っている人たちです。
そしてその犬たち、ボクサーとかがっちりした躰つきの犬が多かった気がします。毛並みを見る限りでは、飼い主さんよりもちょっといい身なりをしていて、餌などもしっかりともらっていそうな感じでした。
はたして、彼らはボディーガードなんでしょうか。それとも仲間を必要とする気持ちからでしょうか。ひょっとしたら、小銭などを恵んでもらえる可能性が高くなるから飼っているのかもしれません…。
「私には何も残っていません。職も、金も、プライドも…」とか、「醜い姿をお見せするのは私も嫌なんです。でも、それ以上に飢えているんです」などのメッセージが書かれたボール紙を持ち、ストリートの目につきやすいところに座る彼らの姿とその数は、いろいろと考えずにはいられないものでした。
行きすぎた資本主義を是とする、あるいは「そういうものだしょうがない」と受け入れる人たちが減らず、このまま貧富の差が広がっていけば、サンフランシスコの霧の先には日本の都市部に広がる同じような景色が待っているのかもしれません。
とは言え、文句を言ってるだけじゃしょうがないですよね。
こうした社会を変えていくのはわれわれ市井の人だと私は思っています。
僕らがどうしたいか、そのために何をするのかをひとりひとりが考えて決断して行かなきゃならないってね。
「世の中を疑ってかかることにすごく興味があるんです(Watson IoT 村澤 賢一)」より
Happy Collaboration!
和田、いろいろお世話してくれてありがとう! 高校卒業以来だったと思うけど、また近いうちに会おうね。