Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

デンマークのオープンソースとマニフェスト

 

2度目のデンマークの旅で強く心に残ったのは、「オープンソース」と「マニフェスト」という、2つの「拡げるためのデザイン」でした。

まだ理解しきれていない感じではありますが、自分の思考整理を兼ねて書いてみます。

 

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オープンソースという概念については、これまでにさまざまな人がさまざまな立場で語っています。

ただ正直に言えば、わたしにとってはこれまで見聞きした話はどれも「考え方の理想」を説いたものであって、有用性を発揮しているものはどこにあるのだろう? という感じでした。

(私の知識不足に過ぎないのでしょうが)知っている大きな成功例と言えばLinuxWikipediaくらい。そんなわけで「美しいけれど実践的ではないもの」というイメージを持っていて、深い興味を惹かれることもありませんでした。

 

でも今回デンマークの旅の途中に、何度か「あ! これもオープンソース的なスタートから拡がっていったのか」と思わせられたものがありました。

最初にそれを気づかせてくれたのは、デンマーク料理に変革を起こしたクラウス・マイヤー(※1)の講演でした。

 

デンマーク人は騙され続けていたんだ。美味しくもない料理を「そういうもの」と思い込まされ、「そうなった理由があるのだろう」と思い込み、地元の食材や新しい料理方法に目をつむっていた。

でもそれは事実じゃなかった。それを気づかせたかったら、本当に新しくて美味しい料理を作って、それを食べた他の人たちも自分たちでできるようにすればいい。

みんながそうしやすいように、方法や考え方を広く公開して自由に使い、応用しやすくしてあげればいいんだ。」

 

ニューノルディック・キュイジーヌ※2)の爆発的な広がりは、こうして始まったようでした。

そして2度のデンマークの旅で見聞きしたいろんなものごとに、「良いものにはみんなで一緒に取り組もう」という考え方を感じたさせてくれるものがたくさんあることに改めて気づきました。

 

例えば、森の幼稚園(※3)やフォルケ・ホイスコーレ(※4)などの教育システム。

これらは初期の取り組みの成功にインスピレーションを受けた人たちが、自分たちなりのエッセンスを加えて運営していこう、そしてもっと自分たちの状況に合わせた良いものに発展させていきたいと考える人たちのアプローチであり実践方法がふんだんに取り入れられているように見えます。

 

また、同じようなことを、デンマーク流の未来デザイン手法(※5)の始まりや今後の広げ方だったり、エコヴィレッジ※6)の浸透にも感じるのです。

そこに見えるのは、先人たちが積極的に後続者を応援し、変化させていくことを歓迎している姿です。

 

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こうしてオープンソースとして伝え拡げるのに、とても重要な役割を果たしているのが、マニフェストでありそれを高らかに宣言する行為です。

なお、クラウス・マイヤーがNomaをスタートする際に発表したマニフェストは下記のIDEAS FOR GOODのページでご覧いただけます。

ideasforgood.jp

また、デンマークのパンを完全に新たなものとした際にも、それはそれはとても熱く、でも楽しみながら人びとに訴えかける彼の姿があったことを、今回のデンマークでの彼のセッションでビデオを見せてもらい知りました。

 

そして驚いたことに、今回一緒にそのビデオを観た仲間の1人がクラウスのその姿に大きなインスピレーションを受けて、社会問題に挑戦する新しい非営利ビジネスをスタートさせる計画を立て始めています。

これも明らかに、「高らかに宣言すること」の力を示していると私には思えます。

 

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デンマークに暮らす人たちと話していて共通項的なものとして感じるのは、皆が「後から来るものに積極的に手を貸す」というスタンスです。

自分なりに研究した限りではあるものの、どうやらそれは「信用が中心に置かれた社会」が成り立っているからこそできていて、さらにその基盤となっているのは「自分たちが変えられるという意識」だと思います。

そしてそれを下支えしているのが、「80パーセントを決して下回らない高い選挙投率」だったり、「汚職や不正は決して許さないという社会規範」だと思うのです。

 

自分たちの周りもそんな風になったらステキだなって、強く思います。

とは言え、変化はとても難しい。一朝一夕に変わるものでもなければ、そもそも変わらないかもしれない。

 

でも何かを取っ掛かりにしなければ永遠に変わりません。

今回デンマークで見聞きし感じたのは、社会的な常識や仕組みを変えたいのなら、そしてものの捉え方やアプローチに変革を起こしたいのなら、まさにオープンソースマニフェストの出番なんじゃないかということです。

 

諦めるよりは高らかに自分のやり方を宣言して、賛同者にどんどんそれぞれにアレンジして貰えばいい。おれのマニフェストを考えよう。

Happy Collaboration!

 

※1 クラウス・マイヤー Noma(ノーマ)という世界一のレストランの共同創設者の1人。今回のデンマークの旅では、彼に1日指導をしていただきました。 クラウス・マイヤーという北欧料理を変えた男の話

※2 ニューノルディック・キュイジーヌ それまで注目を集める浴びることのなかったデンマーク料理を、一躍世界に知らしめたムーブメント。なおデンマークではなくノルディックなのは、範囲を拡げた方がインパクトも強くなるからということらしいです。

※3 森の幼稚園 子どもたちの自主性の確立に重きを置き、そしてひたすら野外で時間を過ごす幼稚園。昨年、あんぐ空いた口が閉じなくなる体験をしました。 ロラン島の森の幼稚園と過激なまでの平等主義

※4 フォルケ・ホイスコーレ 17.5歳以上なら誰でも入学できる全寮制の成人教育機関。基本的にデンマーク人なら無料で入学でき、日本人も有料ではあるものの入学可能。ただし、卒業しても資格や認証は何ら手にすることはできない。

 

※5 デンマーク流の未来デザイン手法 フューチャーデザインメソッド。オーフスにあるカオスパイロットという大学院を発祥の地とし、現在はコペンハーゲンのBespoke社が日本にも積極的に展開中。 未来へ – ブック・オブ・フューチャーズ (Bespokeの『Book of Futures』日本語訳)

※6 エコヴィレッジ 持続可能性や自治性に重きを置く人びとの共同生活体。「現代版にアレンジされたヒッピー的生活」というのが私パチ流の解釈です。