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『非認知能力: 概念・測定と教育の可能性』より「好奇心」(読書メモ)

 

非認知能力: 概念・測定と教育の可能性』(小塩真司 著)の中に「好奇心 --  新たな知識や経験を探究する原動力」という章(著者 西川一二 京都大学大学院教育学研究科 研究員)があり、好奇心関するこれまでの研究が端的にまとめられていました。

 

おれ自身の好奇心に関する全体理解と、そして用語理解を深めるために要約を抜書きしておきます。

まとまりがないのですが、自分用のメモということで。

 

なお、本そのものが基本的には幼児教育や保育の分野にいる人を念頭に書かれているので、一定の年齢に達している人間には当てはまりづらいものもあると感じました。

でも、飛ばし読みですが、本そのものはかなりおもしろそうでした。

 

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好奇心 --  新たな知識や経験を探究する原動力』(西川一二 著)より

■ 1節 好奇心とは

アインシュタインプラトンアリストテレス。彼らが好奇心をとてもポジティブなものと捉えているのに対し、アウグスティヌスやミルトンは人を惑わせるものという要素にも目を向けており、イギリスでは「好奇心は猫をも殺す」 -- つまり「過度な好奇心はよくない」ということを伝える諺もある。

 

心理学研究において、好奇心は学力に対し、知能、勤勉さに続く三番目の力をもっていることが調査研究により報告されている。

学校や企業の組織人事では、好奇心の高さは、心身の健康増進につながるとされ、心理的ウェルビーイング(well-being)のポジティブ・バイタルサイン(positive vital sign)として扱われている。

 

アメリカ心理学の祖ジェームズは、人間には以下2つの好奇心があると指摘している。
「知覚的な好奇心」 -- 新奇な対象に接近反応をもたらす(喚起させる興奮と快楽により、新奇な対象に対して回避反応をもたらす不安と拮抗する)。

「科学的な好奇心」 -- 情報と知識のズレから喚起される。人はこのズレを解決することで喜びを感じ、また新たな情報収集へと促される。

 

■ 2節 好奇心研究のはじまり

●  好奇心による探索(好奇心探索)の主な特徴は、「新規性探索(novelty seeking)」。目新しい物事の探索であり、多種多様な領域に展開する。

● 好奇心の種類を「好奇心領域」として表すと、以下が代表的なものとなる(好奇心の種類や生起メカニズムの研究はバーラインの研究が元になっている)。

  •  「知的好奇心(epistemic curiosity)」 -- 問題や課題などの知的情報領域における好奇心探索
  •  「知覚的好奇心(perceptual curiosity)」 -- 音・光・触覚などの感覚・知覚情報領域における好奇心探索
  •  「対人的好奇心(interpersonal curiosity)」「社会的好奇心(social curiosity)」 -- 人の心理や秘密などの対人情報領域における好奇心探索

* 「対人的好奇心(interpersonal curiosity)」と「社会的好奇心(social curiosity)」は1つの説明に併記されているが…ここはしっかりと理解したい。

「人」に対する好奇心と「社会」や「場」に対するそれは、相互に強い影響を与えあい互いを変化させるものであり、さらにそれが他の好奇心領域の発生や展開に大きく影響を与えるだろう、と予測。

 

●  人の行動原則(動機づけシステム): 「人は常に刺激や情報に対して好奇心と不安が共存し、刺激に対する好奇心と不安の感じ方の大きさによって探索(接近)行動もしくは回避行動を起こす」(実証的研究による証明はできていない)

●  バーラインによる好奇心探索の生起メカニズムの定式化:「人や動物は、認識された刺激の強さ(たとえば目新しさや複雑性)が弱いときもしくは強いときに、不快感や嫌悪感を伴う高覚醒状態になり、上がった覚醒度を下げようとして、好奇心探索を起こす」

●  好奇心タイプとは、対象に対する状態好奇心(state curiosity)の生起メカニズムの探索方略。定番は存在せず、今も議論が繰り広げられているが一般的なのは以下の2つ。

  •  「拡散的好奇心(diversive curiosity)」 -- 刺激が弱いと感じたときに起こる。新規性が低い環境によって生じる不快感や退屈を解消させようとする。幅広い情報を求め、曖昧な情報に対して許容する傾向が高い。
  •  「特殊的好奇心(diversive curiosity)」 -- 刺激が強いと感じたときに起こる。複雑性が強い刺激に触れた場面によって生じる不快感や嫌悪状態を解消させようとする。情報の不整合や矛盾を察知し、それを解消しようと取り組み、秩序を求め曖昧な情報を嫌う傾向が高い。

●  (日本の好奇心研究のパイオニアである波多野と稲垣による)認知的動機づけ理論の3つの定式

  1.  人間を含む高等動物は、好奇心の強い存在である
  2.  情報処理の最適水準をもつ
  3.  不調和を低減しようとする

人は好奇心の強い生物であり、個々が持つ情報処理最適水準を維持しようとする

  •  「拡散的好奇心の特徴」 -- 新規な情報を多様に求める。生産的な探索傾向。
  •  「特殊的好奇心の特徴」 -- 不調和を解消するために起こる。情報のズレや矛盾に敏感な傾向。

●  確立していない好奇心タイプの分類

  •  「広さー深さ(Breadth-Depth)による好奇心分類」
  •   「情報のズレ(nformation-gap)の際に伴う剥奪感(feeling of deprivation)を好奇心探索の動因として扱う」
  •  「興味気分による好奇心(Curiosity as a Feeling of Interest: CFI)と焦燥感による好奇心(Curiosity as a Feeling of Deprivation: CFD )」 -- 好奇心探索の動因として「肯定的な気分(pleasant feeling)」と「不快な気分(unpleasant feeling)」を組み込んだもの

 

 その他、好奇心に関するキーワード

  •   興味型: 知識が得られるという期待に対するワクワクした好奇心的探究(特性としてのCFI)であり、この特性が高いと、新規制を好み、さまざまな物事に対してポジティブ感情を抱きやすい。楽観的になり、リスクや危険を顧みない行動に出やすくなる。
  •   焦燥型: 情報の不一致や矛盾による剥奪感(あるいは、モヤモヤ感)で起きる好奇心探索(特性としてのCFD)であり、この特性が高いと、ネガティブ感情を抱きやすく、衝動を抑制でき自己制御が高く、曖昧さを嫌う傾向が高くなる。
  •  伸展型(streching): 自己の成長を促すために新しい機会を探し求める。この要素が高い人は心理的ウェルビーイングが高くて主観的幸福感を抱きやすく、学業成績も高いとされている。
  •  包括型(embracing): 予期しない出来事でも積極的に、不確実性やあいまいさも受け入れる。この要素が高い人は心理的ウェルビーイングが高くて主観的幸福感を抱きやすく、学業成績も高いとされている。
  •   知覚的好奇心尺度(perceptual curiosity scale): これが高い人は、芸術作品などに対する美的感覚が鋭いとされています。また近年では、知覚的好奇心における行動特性と神経生理的つながりが注目されています。

 

● 対人的・社会的好奇心における3つの種類

  •  感情: 他者の気分や感情など心理情報を知りたいとする好奇心。共感性の発達や情動知能の発達における諸要因に位置付けられている。
  •  秘密: 人の秘密や隠し事を知りたいとする好奇心。詮索行動の動因とされ、刺激欲求との高い関連が指摘されている。
  •  属性: 人の出身地や特技、所属情報などの公的な情報に対する好奇心。対人行動の動因とされ、人間関係の発展や社会的スキルの向上につながるとされている。

 

● 応用的な好奇心領域

  •  個人内好奇心(intrapersonal curiosity): 内省や反すうなど個人内の思考領域に関する好奇心
  •  仕事場面に関する好奇心(work-related curiosity)
  •  病的好奇心(morbid curiosity): 死体や動物の捕食場面や性的描写の詮索あるいは窃視傾向を示す好奇心

 

■ 3節 好奇心を伸ばすための介入研究

「情報のズレや矛盾」が(知的)好奇心を促進するが、それは「適度な情報のズレ」である必要がある。欧米の好奇心研究では、「答えが喉まで出かかっている(Tip of Tongue)」が適度とされている

* この「適度」はかなりシンプルな、ありは短期的な「知的好奇心」ではないだろうか? 「検討も付かない」ところから探索をはじめることに喜びを感じることも少なくないと思うのだが?

 

■ 4節 教育の可能性

「適度な情報のズレ」を効果的に引き起こさせる指導方法として波多野らが提案しているのが、【問題】-【予想】-【討論】-【実験検証】の4段階を科学的な手続きに沿って実施する「仮説実験授業」。

「適度な情報のズレ」状態による好奇心探索には、特性としての「知的好奇心」の「特殊的好奇心」の高さも必要になってくる。また、「適度な情報のズレ」状態の前段階では、新奇で多様な情報を求める(新奇性探索)ような特性としての「拡散的好奇心」や他者への感情を詮索するような「対人的好奇心」などの活発さ、いわゆる「拡散的好奇心」の高さが普段から必要。

 

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これまで好奇心に書いたものと重なるところも多々あり、本当は整理した方が良いのでしょうが…。

まあ、おれはアカデミックに取り組みたいわけではなく、シンプルに人びとがもっと「好奇心ドリブン」で過ごせる社会にしたいだけなので、まあ、よしとさせていただきます。

Happy Collaboration!