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タマネギとアボカド - 読書メモ『ハーバードの心理学講義』

 

自分の興味や方向性をあらわす言葉の一つとして #幸福中心設計 をここ1年ほど使っています。

先日書いた、質問票への答え(脳みそ解体再構築)集というブログエントリーでは、以下のように #幸福中心設計 を説明しました。

 

僕らは幸福を追求する生き物なはずなのに、幸福を追求するのがすごく下手くそなんじゃないかという気がしてます。例えば、快楽とか楽しさも幸福の構成要素だとは思うんだけど、瞬間的なそれを強く求め過ぎてるとむしろ幸福とは程遠い結果につながったりするでしょ? そういう全体感というか、俯瞰的な見かたで、日常の小さなことから社会の大きなことまでを「どうすればもっと幸福になれるのか」って考え、意識して行動し暮らすことが幸福を中心に据えたデザインなのかなって。

改めてこれを読むと、社会の大きな幸福のことだけ考えて、まるで自分の幸せは追求していないみたい…。

もちろんそんなことはなくて、まずは自分自身の幸福を真っ先に追求しているのですが、私の場合(そしておそらくほとんどの人も同じじゃないかな?)は「他人の幸福をサポートできたときに幸福感を強く感じる」のを自覚しているので、そこを強く意識しています。

また、幸福をデザインするにあたり幸福とは一体なんなのかを常に見直したり考えたりし続ける必要があると思っているので、最近では結構その類の本を読んでいます。

 

と、前置きが長くなりました。

今回書こうと思っているのは最近読んだ『自分の価値を最大にする ハーバードの心理学講義』(ブライアン・R・リトル 著、児島 修 訳)という本を紹介したかったからです。

私は「ハーバードのxxx」だの「スタンフォードのxxx」だのというタイトルの本を見ると、心に一筋冷ややかな風が流れて手にする気が起きないタイプだったのですが、最近になって「日本語タイトルはたいてい日本の出版社や編集者都合でつけられたもので、本の中身や質にはさほど関係がない」ということにようやく頭が回るようになりました。

重要なのは原題ですね。この本は『ME, MYSELF, AND US』です。

 

読み終わって最初に思ったのは、この本は「幸福をデザインしたい」と思っている人には、必ずどこか響くところがあるだろうということでした。ただ、逆に扱っている範囲が幅広いので、「そこはいいや」ってところも人によってはありそう。

すでに出版されてから時間も経っていて多くの書評が出ています。

でも、なぜか「タマネギとアボカド」に関する研究や事例の話はあまり取り上げられていないみたいなので、このエントリーではその部分にフォーカスしてご紹介しますね。

でも、その前に、私なりの言葉でこの本の趣旨をまとめてみます。

 


  • 人は、あらゆるものやできごと、人や概念を、その人なりに評価基準に合わせて解釈している。
  • 評価基準がとても固定的な人もいれば複数のそれを常に変化させ続ける人もいる。
  • 評価基準の基になっているものの1つが、ビッグファイブと呼ばれる個人特性を表す5つの項目(誠実性 | 協調性 | 情緒安定性 | 開放性 | 外向性)のバランスである。
  • ビッグファイブの特性バランスがそのままその人の日々の行動として現れるわけではない。
  • 人々の行動を動機付ける大きな要素は、遺伝(生まれ持った性質)的動機、社会的(社会や文化の規範に合わせようとする)動機、個人的(生活の中で追求している計画や目標と深く関連するその人固有の)動機の3つがある。
  • 表出する行動が常に一貫している人と変化する人がいて、それはその人の状況に対するスタンスや行動の取り方による。
  • そのスタンスや行動の取り方を測るのがセルフモニタリング(SM)テストで、スコアが高い「タマネギ型」の人は、例え特性的には内向的であっても必要とあらばパーティーで積極的に振舞うことができる。
  • SMテストのスコアが低い「アボカド型」は、ステーキを一口食べる前から塩を一振りする。
  • タマネギ型は人からどう見られているかを気にし、状況に合わせて振る舞うことができる。アボカド型はどう見られているかを気にしないので自分の価値観に従う。
  • パーティーに友人を誘う際、タマネギ型は「集まりに相応しい場の雰囲気に合う友人」を誘い、アボカド型は「場の雰囲気に関係なく自分の気の合う人」を誘う。
  • 自分のSM度とその傾向を知り、それを自分の価値観とバランスさせることで自身の幸福感を高めることができる。
  • コントロール(自己効力感)、コミットメント(関係への積極性)、チャレンジ(変化受容)がパーソナリティの中心にあると、幸福度を高められる。
  • 人は環境に大きな影響を受けるので、自身の「環境気質」を理解した上で、住環境や生活環境を選んだ方が幸福度を高められる。
  • また、自身の環境気質の理解により、ソーシャルウェブとの関わり方やそこでの振る舞いをよりポジティブなものにできる。
  • 生活に意義をもたらす「重要性」「自分の価値観との一致」「自己表現できる」の高いコア・パーソナル・プロジェクト(CPP)を持つことで、幸福感を高められる。
  • 人はあらゆる人と似ていると同時に誰にも似ていない。多面的な自分を受け入れ手を取り合って歩んでいこう。

 

箇条書きで16個…もっと絞りこもうと思ってたんですが、絞り切れませんでした。

そして中盤の太字にしたところが「タマネギとアボカド」に関係する部分です。

皆さんはセルフモニタリング(SM)テストって聞いたことがありましたか? ビッグファイブ特性や環境気質は他の本などで読んだことがありましたが、私はこの本で初めてSMテストのことを知りました。

 

そして、このテストをやって結構ビックリしました。

18問にマルバツで答えて、最後に答え合わせをするタイプのテストです。全部で5分もあればできるものなので、ぜひ皆さんもやってみてください。

 

  1. 他の人の行動を真似ることは苦手だと思う。
  2. 人の集まる場で、他の人を喜ばせるようなことをしたり、言ったりしようと思わない。
  3. 確信を持っていることしか主張しない。
  4. あまり詳しく知らないことでも、とりあえず話をすることができる。
  5. 自分を印象づけたり、その場を盛り上げようとして演技しているところがあると思う。
  6. たぶん、いい役者になれるだろうと思う。
  7. グループの中では、めったに注目の的にならない。
  8. 場面や相手が異なれば、まったくの別人のように振る舞うことがよくある。
  9. 他の人から好意を持たれるようにすることが、それほどうまいとは思わない。
  10. 自分自身は「いつも見た目どおりの人間」ではないと思う。
  11. 他の人を喜ばせたり気に入ってもらうために、自分の意見ややり方を変えたりしない。
  12. 自分には、人を楽しませようとするところがあると思う。
  13. これまでに、ジェスチャーや即興の芝居のようなゲームで、うまくできたことがない。
  14. いろいろな人や場面に合わせて、自分の行動を変えていくのは苦手である。
  15. 集まりでは、冗談を言ったり話を進めたりするのを人にまかせておく方だ。
  16. 人前ではきまりが悪くて思うように自分を出すことができない。
  17. いざとなれば、相手の目を見ながらまじめな顔をして嘘をつける。
  18. 本当は嫌いな相手でも、表面的にはうまく付き合っていけると思う。

 

採点方法: 以下の◯×と、自分の答えが一致するものに◎をつけてください。 最後に◎の数を合計したものが、あなたのセルフモニタリング尺度のスコアになります。

1× 2× 3× 4◯ 5◯ 6◯ 7× 8◯ 9× 10◯ 11× 12◯ 13× 14× 15× 16× 17◯ 18◯

 

 

いかがでしたか?

すでに想像されていると思いますが、タマネギは『幾層にも皮が重なっているが、めくって行っても中心となる核のようなものはない』、アボカドは『中に硬い核のようなものがある』というところからきている比喩です。

私がビックリしたのは自分のタマネギっぷりでした。やる前からタマネギ型だろうなとは想像していましたが、なんとなんと17/18であてはまりました。

 

唯一あてはまらなかったものも、ちょっと悩んで違う方に答えたものだったので、いわば17.5/18って感じです。

…まあでも、核もあると思ってるんですけどね。だから「ものすごく小さな核を持ったアボカド」じゃないかな、おれ。

 

 

この本の一つの特徴は、このSMテストをはじめビッグファイブ特性テスト、ローカス・オブ・コントロールテスト、ストレス耐性やクリエイティビティチェックなど、多数の「科学的(統計的)パーソナリティ・チェック」を解説しながらも、その度に慎重に「故に私はこういう人間である、以上。と受け取るべきではない」と強調していることです。

最後に、それを表現した文を3つ引用します。

 

■ 実際には、人生ではいつも普段通りの自分でいられるわけではありません。そのときに力を発揮するのがさきほどご紹介した「自由特性」と呼ばれる「変化できる性格」です。もとの性格と違う自分を演じることは、自分を偽るというようなことではなく、私たちの可能性を広げてくれる、意義のあることなのです。

 

■ 私たちがキャラクターの外に出るのは、「大切にしているもの」があるからです。人間は、生まれ持った性格に従って行動するときに力を発揮することもありますが、愛情やプロ意識から普段とは違う行動をとることで、個人や職業人としての責任を果たそうとするのです。

 

■ 注目するテーマは、「コア・プロジェクトの持続的な追求が、幸福度を高める」というものです。持続的に取り組んできたプロジェクトを理解することは、これまでの人生の歩みを振り返り、自分自身を理解することと、将来の新たな可能性についての視座を得ることの両方に役立ちます。

 

Happy Collaboration!