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日本(人)の労働生産性(4) – 複業とモチベーション維持(提言)

4回に渡った「日本(人)の労働生産性」シリーズも今回が最後です。

私なりに生産性の観点から考えた、「ソーシャル」と「モチベーション」と「ダブルワーク」についての提言を書きます。 f:id:dubbed_pachi:20210710075014p:plain

■ ソーシャルを活用して自分の活動を公開する

前回の『日本(人)の労働生産性(3) – 自分の時間を決めるのは自分』の最後に、「スタンスを公開しよう」ということと「自己開示の返報性」のことを書きました。

「自分の働きかたのスタンスを周囲に伝え、オープンにコミュニケーションをしよう」ということをだったのですが、コミュニケーションは「一度取れば完了する」というものではないですよね。コミュニケーションの目的は、自分とチームや上司のお互いの期待値を、状況に合わせて調整してみんなが納得いく状態を保つことですから、日常的に必要です。

 

「それならコミュニケーションのための時間を追加で確保しないと…」となってしまっては、これまで以上に時間が必要な事態を招いてしまいます。

そうではなくて、今の活動や取り組みに、コミュニケーションの前段となる「発信」を組み込んでいきましょう、上司やチームメンバーが簡単に見ることができるように、仕事の透明性を高めましょう。

 

具体的には、社内にソーシャルウェアやグループウェアがあれば、それをどんどん活用して、自分の活動を積極的に発信しましょう。

そしてそこに、自分の考えなどを書き添えて、チームメンバーや上司とのコミュニケーションの場にしていきましょう。

 

最近のソーシャルウェアであれば、「xxしています」とつぶやかなくても、自動であなたが実施したアクティビティーを、つながっている人たちのタイムラインに表示してくれるでしょう。

また、メンションという一種の「呼び出し機能」を使って、仲間や上司にオープンな場でのフィードバックを依頼することもできるでしょう。

 

こうして、日常的に自分の意思と活動をセットにして周囲に発信していくことで、「コミュニケーションのための時間」を新たに作らなくても、活動を周囲の人に知ってもらうことができます。

これを続けていけば、細かい「報告」のための時間を大きく削ることができます。その分を「すり合わせのためのコミュニケーション」に活かしましょう。

 

社内ソーシャルやグループウェアがない場合は、ちょっと面倒かもしれません。それでもできるだけ何に取り組んでいるか、何を検討しているかなどを、周囲が簡単に分かる方法を考えてみてはどうでしょうか。

報告書をメールで送っている人やチームは、それをみんなが見れるデータベースに置くようにするとか、新しいアイデアや興味関心を持っていることを、週に一度チームのメーリングリストに送るようにするとか…。

社外に出しても問題のないものであれば、Facebookなどの一般のソーシャルウェブを活用することも検討しても良いかもしれません。

 

■ 何よりも守るべくは自分のモチベーション

透明性高く仕事をすることで、お互いの期待値調整を日常的に実施できます。そして、透明性の高い仕事のやり方は、重要なことをもう一つもたらしてくれます。

それが、マイクロマネジメント()の防止とモチベーション維持です。

  ()マイクロマネジメントとは、管理者である上司が部下の業務に強い監督・干渉を行うことで、一般には否定的な意味で用いられる。マイクロマネジメントを行う管理者は、業務のあらゆる手順を監督し、意志決定の一切を部下に任せない。

ウィキペディア - マイクロマネジメント

 

マイクロマネジメント型のマネージャーの典型的な行動が「部下の行動を根掘り葉掘り知りたがること」です。そして「行動の大部分が見えない」ことが、マイクロマネジメントを引き起こしている大きな原因の一つではないでしょうか。

いわば、やたらと束縛したがる彼氏/彼女のようなもので、こちらの行動を一つひとつ確認したがったり、何か一言加えたがる性質が現れるのです。

 

マイクロマネジメントの最大の功罪はモチベーションを殺すことです。必要以上の口出しを防ぐためにも、こちらの行動をソーシャルウェブ上で可視化し「見ればわかる」状態を作っておきましょう。

また、こうすることで、相手の「口出し」をオープンな場に引き出す効果も期待できます。

 

前々回の記事でも取り上げさせてもらった『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』にも書かれていますが、マイクロマネジメントの対極にあるのがエンパワーメント()で、エンパワーメントこそが社員のモチベーションと自律性を引き出す鍵だと広く言われていることです。

  www.cm-publishing.co.jp)エンパワーメント(エンパワメントとも、Empowerment、湧活)とは一般的には、個人や集団が自らの生活への統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与えるようになることであると定義される。エンパワメントの考え方は昨今大きな広がりを見せ、保健医療福祉、教育、企業などでも用いられている。広義のエンパワメント(湧活)とは、人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させることと定義される。

ウィキペディア - エンパワーメント

 

■ 複眼的な視点を得るためのダブルワーク

最後の提言です。

仕事の透明性を高めて生産性を上げ、自分の時間を手に入れることができたら、その時間を「ダブルワーク」にあててみてはどうでしょうか。

 

ここでいう「ワーク」は、「雇われて給料をもらって働く」という狭義の意味ではなく、「価値を他者に提供して(物質的、非物資的にかかわらず)報酬をいただく」という広義の意味です。感謝の言葉や達成感を受け取ったり、他では得難い経験やスキルも報酬であり、それを得るための活動をワークとしています。

最近は複業を認めている会社も増えてきていますし、認めていないと言っている会社でも営利ではないワークや、プロボノと呼ばれるボランティア・ワークなら推奨している会社も多いはずです。

参考: 副業禁止の、「社員に外の世界を見せたがらない会社」にいると、何がマズいのか?

 

所属している企業とは別の組織の視点を得ることで、従来の組織では経験できないチャレンジを体験できたり、普段とは異なる観点をベースにしたプロジェクトの進め方を実践できたりと、多くの報酬を手に入れられるでしょう。

さらに広義の「ワーク」には子育てや自分育て、地域活動やPTA活動など、ライフを豊かにするさまざまな活動を含められるでしょう。

 

ビジネスにおいて多様性が重要と言われるようになって久しいですが、性別、年齢、国籍などの属性以上に、「複眼的視点」を持った、つまり「自身の中に多様な視点を持った個人」はこれまで以上に重要視されるようになるでしょう。

そして「課題解決能力以上に課題発見能力が重要」という言葉もよく耳にするようになりましたが、複眼的視点こそが物事を立体的に浮かび上がらせます。そしてさまざまな角度から物事を見えるようにすることこそが、今まで見えていなかった課題を発見するためのコツです。

 

企業側からみれば、複業を通じて自社では提供できなかった経験やスキルを手に入れてもらえる。そして社員側から見れば達成感や貢献感、ワクワクや成長の機会というさまざまな報酬を得ることができます。

もう一つ言えば、狭い世界に無理に自分を押し込み、意義を感じられない状況が「ただひたすら我慢するしかないもの」じゃないと、きっと気づくはずです。

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以上、「日本(人)の生産性」にまつわる分析と提言を4回にわたって書いてきました。

特に、提言の部分は、自分の成功体験と失敗体験をベースに書いたので、もし、より具体的な方法や実践例を知りたいという方がいらっしゃったら声をかけてください。

 

ふー。次回からユルいの書こうっと。

Happy Collaboration!