Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

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アメリカン・ユートピアとシナプス可塑性 — We ALL need Reasons to be Cheerful.

「この映画なんか話題になってたのは覚えている。そして今、なんだかいつも観るようなのとは違う映画が観たい気分…。まあ、とりあえずオープニングだけでも見てみるか」とスタートして5分。「やっぱ違うの観ようかな? でもまあもう少し」と続けた。
ナイスおれ。でかした昨夜のおれブラボー! 今年最高の映画だった。なんだこの爽快感。

 

トーキング・ヘッズはバンドマン時代のおれのガンチューには入らないバンドで、ほとんど聞いたことがなかった。そしてそれはその後ソロになったデヴィッド・バーンに関してもまったく同じ。聞いたことがない。

いや、より正確に言えば、多分何度か聞いている。だが一曲も記憶に残っていない(あ、サイコ・キラー…)。

 

そして、より正直に言えば、今回この映画(舞台)を見ていなければ、それは今もそうだったかもしれない。ファンにはぶん殴られそうだが、「曲(音)」という枠組み、あるいは単位で見たときには、それくらい(おれにとっては)彼の曲は大して色を持たないものなのだ。

でも、それがこのグループのステージから届くと、すべての曲が素晴らしいパフォーミング・アートとなり、力強いメッセージとなるのだ。そして失ったと思っていたシナプスが、結び直されていく(ところで、試しにSpotifyで『American Utopia on Broadway』を聴いてみたんだけど、やっぱ舞台の映像が頭に浮かび上がってこないと響いてこない…。逆に映像が頭に浮かぶとすっかり音楽に意識が向いてしまって…BGMにはできない感じ。というわけで、映画で観てほしい)。

 

ところで、デヴィッド・バーンのあの語り口と、あのグループの肉体性を伴った(だがクリシェ感は薄い)表現は、なぜこうもハラハラとベタつきの少ない涙をおれに流させるのだろう? これはもう奇跡っていっていいレベルだと思うんだけど(なんなんだあれ? どうしてこんなに浄化されている感覚になるんだ!? …多分、肩の力が抜けた誠実でフラットな政治的な問いかけも関係しているのだろうな)。

 

例えばダンサーが空を飛ぶような動きをしたら、観客は自分も飛んでいるような感覚が味わえる。たとえダンサーみたいな身体能力がなかったとしてもね。それがダンスのすごいところだと思う。でも、ダンスがトゥーマッチになると、その共感するフィーリングが感じられなくなってしまう。音楽や言葉と繋がりを持ちながらダンスをする。そのバランスが重要なんだ。

デヴィッド・バーンが歌い、踊り、語る 『アメリカン・ユートピア』 | CINRA

 



この文章を書いている主な理由は、少しでも多くの人がこの映画を観て「日本公演の実現を!」と騒ぎ出して欲しいからだ。

きっと去年映画館で公開されたときには、上に書いた「デヴィッド・バーン…んんー」っておれみたいな奴が多かったことだろう。それに、「映画館に行くのには抵抗がある」って人も多かったことだろうしね。

でも、Amazon Primeで観ることができる今なら、きっと違うのでは?? これを観たら「舞台で観たい! 生で観たい!!」ってなる人はかなりいると思う。

 

まあ実現することはない…のかもしれない。それでもそれを望む多くの声があることが、デヴィッド・バーンやあのチームに届いて欲しい。

We ALL need Reasons to be Cheerful.