Verseとチェンジ・リーダー
ここのところ何人かに続けて聞かれました:「パチさん、最近はIBMで何しているんですか?」
たしかにしばらく、仕事のことをあまり書いていませんでした。 もちろん、社内コラボレーションを活性化する「コラボレーション・エナジャイザー」業をやっていますが、中でも今年最も注力してきたのはIBM Verseの社内展開/推進です。
今回はその内容を紹介します。
■ IBM Verseとチェンジ・リーダー
まず最初に話が分かりやすいよう、「IBM Verseとは何か」と「組織変革管理とチェンジ・リーダーとは」の2つについて手短に説明します。
IBM Verseとは…
「人」にフォーカスして生産性を向上させるメールソリューションです。
IBM社内では、契約社員や関連会社社員を含む全社員数十万人のメールを、Verseと従来のNotesとを併用できるVerseハイブリッド環境へと移行しています。
組織変革管理とチェンジ・リーダーとは
Verseの社内展開/推進における私の主な役割りは、「チェンジ・リーダー」です。
組織変革管理(OCM: Organization Change Management)と呼ばれる手法のもとで、グローバルチームの一員として、新たなやり方や考え方を日本に根付かせると同時に、新たな価値を日本からグローバルへと発信しています。
なお、組織変革管理とチェンジ・リーダーについて詳しく知りたい方には、下記ホワイトペーパー(PDFファイル形式)の一読をおススメします。
Making change work - 現実が変化し続ける中で変革を実現する | チェンジ・アーキテクトによる組織変革リーダーシップとマネジメント
■ 世界40万人強のメールボックスをVerseハイブリッド環境へ
「IBMのeメールといえばNotes(ノーツ)」というイメージが強いと思いますが、今年4月からは、従来どおりNotesも使える状態を維持しつつ、かつサービスを一切停止しないままでモバイル時代に適したクラウドベースのメール・ソリューション「IBM Verse」への移行を始めています。
キャズム理論やイノベーター理論でよく使われる「アーリーアダプター(一般的な価値観を持ちつつも、新しいものに敏感で自ら情報収集し積極的に判断を下していく人。影響力も高い人が多いと言われている)」を社内募集し、最初の数カ月は彼らにだけ提供していきました。
そして、彼らからのさまざまなフィードバックを、展開方法や推進方法に活用していきました。
そうした中で、ユーザーがどのような心理状態でこうした変革を受け止めるのか、どのような情報がユーザー・コミュニティーに必要となるのかをチューニングしていき、期待値と現実とをちょうど良くすり合わせていくコミュニケーション・スタイルを築いていったのが夏前までの時期でした。
この時期のキーワードは「早く失敗すればするほど早く軌道修正できる!」でした。
そして7月からは、それまでの学びを活かして一挙に展開を加速しました。 現在、日本では8割弱の個人アカウントのVerseハイブリッド環境への移行が完了しています。
実は、日本のIBM社員は、世界のIBM内でも1,2を争うほどNotesのヘビーユーザーが多く、また「Notes大好き!」社員が多い国なのですが、そんな中でもかなり好意的に受け入れられています。 そしてその「好意の源泉」は、Verseが「独立したメールのためのツール」ではなく、ソーシャルをはじめとしたさまざまなコラボレーション・ツールとの融合を深めているからではないかと私は思っています。
■ 「eメールをなくす」のではなく、ソーシャルと融合させる
eメールは、他のツールやプロセスから独立しがちで、やり取りされる内容は同僚と共有しづらいものです(もちろん、できないわけではないですが)。
それでも無理に共有を進めて行った結果が、「メールに追いかけられるような働き方」ではないでしょうか。
また、ファイルのメール添付が常習化してしまうとメールボックスが資料保管庫化してしまって、何がどこにあるか分からないデスク、あるいは自分以外入室禁止の書斎のような感じになっていたのがこれまでじゃありませんか?
メールとソーシャルがもっと上手にそれぞれの得意分野を分担し合えれば、一度はメールに奪い取られた働き方の主導権を取り戻せるんじゃないのか?
言ってみれば、これがVerseのコンセプトであり強みだと思います。
書き始めたら、思っていた以上にいろいろと語りたいことが出てきてしまいました。
みんなが興味ありそうであれば、次回以降Verseのソーシャル融合について、こんなトピックで書いてみようと思っています:
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自分だけの書斎と共用リビングの間には扉一枚あればいい
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発信者を単なる「From」から、ビジネス・コンテクストを纏った人へ
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仕事内容が多種多様なのに、コラボレーション・ツールは1種類というムチャ
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すきま時間に活用しやすいモバイル・セントリックなインターフェースを
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「添付ファイル」の利便性と危険性: 安全にいいとこ取りを