Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

朝刊の折り込み広告に同じ広告が10枚入ってたら。それも毎朝。

 

■Webマーケティング界の片隅で

Webマーケティングの世界は日進月歩で新しいテクノロジーや概念が登場し続けていて、キャッチアップが大変な世界です。 そんな世界の片隅で、たくさんの基礎知識が欠けている私も、なんとか10数年生きてきました。

…と、なんだか「無駄に大げさ」な書き出しになってしまいましたが、今回書きたいことは実にシンプルです。

愛されるか必要とされるか、少なくともどちらかじゃなければ、企業やビジネスは継続できないんじゃないでしょうか。 なぜか最近、Webマーケティング界隈に、愛せないモノが増えているんじゃないかという気がしてならないのです。 自分たちが「必要とされている」と勘違いして、嫌われることをしているんじゃないかって。

イメージ

■お勉強コーナー

突然ですが、今後のために一緒にお勉強しましょう。 マーケティングを生業としていない方でも、ビジネスに関わる方であれば知っておいて損はない用語を自分なりに説明してみます。

  • デジタル・フットプリント

ユーザーのインターネット上の行動の履歴や形跡。アクセスログや購買履歴などのデジタルな行動の足あと。 「声を聞く」だけではなく、ユーザーの行動からニーズやウォンツを解析したり、サービスやインタラクションをデザインするためのベースとなる。

  • DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)とDSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)

DMPは、上記のデジタル・フットプリントをはじめとするさまざまなユーザーのデータを一括管理し、次のマーケティング・アクションを最適化するためのシステム。 DSPは、オンライン広告を「いつ」「どこに」「誰に」出すか、いくらの予算を割り振るかなどの配信条件を動的に最適化していくシステム。

調べごとをしている相手に役立つ情報を届けることでつながりを作り、その後もニーズに合った情報の提供を通じて関係性を深め、相手のゴールを達成することで自分たちの支援者になってもらおうというマーケティング概念。 一つひとつのマーケティング施策ではなく、検索エンジン、eメール、ソーシャルウェブなどさまざまなインターネット上の機能を統合的に活用して、ユーザーに愛される、あるいは求められる存在となるための考え方。

■愛されるためのマーケティング

4つの用語が正しく繋がると、以下のようなストーリーができあがるはずです。

インバウンド・マーケティングの概念に則り、デジタル・フットプリントをベースにしてDMPがユーザーごとに最適なマーケティング・アクションを導き出す。 そして、DSPにより必要とされている広告がユーザーのもとに届けられる。 そこから企業とユーザーの幸せな関係がスタートする。

ところが実際には、どのWebページを開いても追いかけ続けてくる同じバナー広告の群れに襲われ続け、「この企業とは今後関係を持ちたくない。接点を与えたくない。」というネガティブな感情を抱くケースが増え続ける一方です。 複数のサイトやWebページで同じものを目にするのならそれでもまだマシで、同一ページのあちらこちらで、同じ企業の同じ広告を見せ続けられていれば、その企業やサービスの名前に対する認知率こそ上るものの、その受け止め方は「もういい加減にしてくれ!」以外の何物でもありません。

イメージ

■見てみぬフリの近視眼マーケティング

一過性の現象かと思いきや、もうかれこれこんな状態が1年以上続いている気がします。 どうしてこんなことが起こるのでしょうか。広告出稿企業だって、こんなことを続けていれば嫌われることになると分かっていると思うのですが…。 ましてや、ソーシャルウェブでは、こうした「企業の疑問を抱かざるを得ない行動」がユーザーに取り上げられ、ウェブメディアで話題になることも少なくありません。 …短期的な売り上げだけを見ている? 見てみないフリ、気づかないフリを続けている…??

こうした行動の問題は、下記のような行動に置き換えて考えると、どれだけ嫌がられることかが分かりやすいのではないでしょうか。

  • 朝刊の折り込み広告に同じ広告が10枚入ってる。それも毎朝。

  • メールボックスに毎日届く新着メールの10通が、fromアドレスこそ違うけど中身は全部同じ。

  • Facebookのお知らせアイコンに「10」の表示があって、クリックしたら同じ人が自分の全書き込みにいいね! してる。それも毎日。

最後のはちょっと違うかな…。

■頑張り方を間違うと嫌われる

マーケティング活動の結果、企業やサービスが嫌われることになってしまうということは、これまでにもあったし珍しくなかったと思います。でも、これまでの嫌われ方とはまた少し違う気がします。 なんというか、強い生理的嫌悪感を抱いてしまうのです。

これはおそらく、インターネットが「主体性を持って行動する場」で、かつ「偶発的な出会い」に溢れている世界(何かを探して検索しているうちに、別のものに夢中になっている経験は誰でもあるでしょう)のはずにもかかわらず、強い粘着性でつきまとわれることに対して感じる強烈な不快感が根源ではないでしょうか。私だけじゃないですよね?

いろいろ書いたけど、一番言いたいことはこれです。

「頑張り方を間違うと嫌われる」「やり過ぎはやらないよりタチが悪い」

そしてこれは、企業活動だけにあてはまる話じゃないと思います。 何が本来の目的なのか、じっくりと自分の足元も見直そうと思います。

Happy Collaboration!