Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

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スコットランド70日間滞在記その4 | 到着1週間で「不安」に飲み込まれる

エディンバラでの生活がスタートするひと月ほど前、勤め先であるIBMでの所属部門が変わった。主な仕事の内容はそれまでと変わらない。インハウスのライター兼編集者として、取材し記事を書き発信する。そのための事前の段取りであったり、公開後の関連作業を行ったりということだ。

だが、仕事内容自体に大きな変更はなくても、仕事を通じてやりとりをする社内の関係者や仲間の顔ぶれやコミュニケーションの仕方は大きく変わることとなった。

そしてその変化は、自分が想像していたよりも、遥かにずっと大きな違いをおれにもたらすものだった。

 

部門が変わる前は週に1度、いつものメンバーとオンラインで45分のミーティングをしていた。そこでは、自分が直接は関わっていない件についても話を聞いたり、それに関する意見を交換したり、ときに雑談や近況報告なども頻繁に行っていた。

「パチさんのあの記事を読みましたよ。締めがよかったです。」「あそこであのエピソードはちょっとしつこい気もしました。」——そんなふうに、自分の文章へのちょっとしたフィードバックをもらうこともしばしばあった。

ところが、時差9時間(10月最終日曜まで。それ以降は夏時間が終わり時差8時間)のエディンバラで仕事を始めて、そうした「ちょっとしたコミュニケーション」や「フィードバック」をもらう機会が激減した。

専用のひと部屋を貸してもらっているとはいえ、日本時間に合わせて現地で真夜中にオンライン・ミーティングに出る気はしなかった。

また、チャットツールなどでの「軽いコミュニケーション」も同様で、時差の関係ですぐに返事がすぐにもらえないタイミングだからと、こちらからチャットを送ることもしなくなっていた。

エディンバラからもほど近い、ダンファームリンのアンドリュー・カーネギーの生家にて。現在はこぢんまりとしたやさしい感じの博物館になっています。

 

また、エディンバラ到着後の最初の1週間で、自分の英語力不足を感じるシーンが何度かあった。

普通に会話するだけなら問題はなくても、込み入った話を聞き相手の感情の深いところを探る——そういう「取材」には英語力が足りていないことを実感したのだ(スコットランド訛りも難しかった…)。日本語で取材して作っている記事を10としたら、今の状態では、英語では3や5がいいところだろう…。

日本にいるときに思い描いていた飛び込み取材は、取りやめることにした。

 

周囲からのフィードバック不足。自分の英語力不足。さらに、慣れない居候暮らし(パートナー以外の人と暮らすのは、ワーキングホリデーでルームメイトと暮らしていた25年ほど前が最後)。

はたして、自分はどれだけ「意味のあること」を行えているのか。どれだけの「価値」を、雇用主であるIBMに提供できているのか…?

そこに居たのは、急速に自信を失い、我ながら驚くほど不安を感じている自分だった。