・ 自分の価値を、仕事を通じて発揮できない
→ 他者からのポジティブなフィードバックや評価を受けられない
・ 仕事に身の入らない人間に、給料を貰い続け資格はあるのか
→ そもそもの自分の能力や実力に疑念を持つ
・ 価値を発揮できない自分を受け入れられない
→ 自身の存在そのものに対して疑念を持つ
スコットランド到着後最初の1週間で自分が襲われたのは、この3つの不安だった。
心理学的な言葉で表現すると上からそれぞれこうなるのだと思う。
・ 自己有用感欠乏 | 自分が役に立っている、有用である、と信じる感覚。およびそれを感じる機会の減少から生じる状態
・ 自己効力感欠乏 | 自分の能力とポテンシャル、遂行能力を信じる感覚。およびそれを感じる機会の減少から生じる状態
・ 自己肯定感欠乏 | ありのままの自分の存在を受け入れる感覚。肯定的に自分を捉えられる機会の減少から生じる状態
pachi.hatenablog.com
前回、エディンバラ到着後わずか1週間でこの3つが自分に起こった原因を、「日本語でのフィードバック不足」「英語力不足」「慣れない居候暮らし」だと書いた。
今回、そこをもう少し深掘りしてみようと思う。もしまたいつか、同じようなことが起きたときに、教訓として活かせるように。
■ 自己有用感欠乏 | このままじゃきっと「お役御免」だ…
こう見えても、おれは「大丈夫。おれの仕事や活動に価値や意味を見出してくれている人がいる。今のおれには居場所がある」と感じられる機会がないと、不安になりがちなタイプなのだ。
そんなふうに「自分は価値を発揮できている」と感じたがる部分は、仕事以外にも及んでいて。日本では毎週数時間、おれは海外にルーツを持つ子どもの勉強のお手伝いをボランティアとして行っている。
でも、時差の関係もあり、エディンバラで暮らしている間はその活動を停止していた。
その結果、おれは「自分は会社に対しても、社会に対しても、意義や価値のある活動ができている」と実感できる時間を失くしてしまっていた。子どもたちやボランティア仲間から感謝して貰えるという「ご褒美」を、手に入れられなかったのだ。
今思えば、どうして短期間でも短時間でもOKのボランティアを現地で探そうとしなかったのだろう。
■ 自己効力感欠乏 | 英語力不足で臆病に
前回書いたように、自分の英語力不足を正しく把握できていなかったことがもたらしたものは小さくなかった。
そしてここ数年、仕事で使う英語は「間違っても、気づいたらすぐにその場で誤りを修正できる」通訳などのリアルタイム性の高い仕事よりも、翻訳などじっくり一つひとつの言葉に取り組む仕事の方が多かった。
さらに、スコットランド英語特有の発音や言い回し…。自分の耳がニュースなどで聞く「きれいな発音のきれいな言い回し」にすっかり慣れきってしまっていることを実感させられた。
英語に対する自信のなさが、おれを臆病にしていきました。今思えば本当に大失敗だ。
もっとちゃんとチャレンジして、もっとちゃんと失敗すればよかったのにおれ。
■ 自己肯定感欠乏 | 自己否定感は打ち消せたけれど
誰かの家で暮らしていると、どうしてもその誰かに合わせなければいけない。
仲の良い姪っ子夫妻とはいえやっぱり気は使う。キッチンを使う時間も、トイレやシャワーを使う時間も、リビングで過ごす時間も、彼らの邪魔はしたくない。迷惑はかけたくない。こんなおれでも、大好きな相手だからこそ気を遣うのだ。
ただ、もともとのおれはかなり「自分流」にこだわりが強いタイプだ。何をいつどのようにやるか。あるいはやらないか。それを自分で決められないことに、強烈なストレスを感じる。つまり、自分が意思決定することを通じて、自分自身の存在意義を感じることができるのだ。
ありのままの自分の存在を受け入れ、肯定的に自分を捉えるには、おれには自己決定の積み重ねが必要だった。
■ 自己決定と実行と自信のループ
どうやら、エディンバラでの最初の1週間は、そんな自分を思い出し、じっくりと見つめ味わい、理解するための時間だったようだ。
最初は打ちのめされたけれど、自分がどうして弱くなっているのかその理由をはっきり掴めてからは、ペースを取り戻すことができた。
足りなかったのは自己決定する機会。そして決定したことを実行して楽しむこと。周りに振り回され過ぎず自信を持つこと。
この3つはそれぞれつながっている。自信があれば自己決定できる。自己決定したことはやりたくなる。楽しくやれれば自信がつく。