Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

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エンタープライズ・ソーシャルとキュレーション

キュレーションの意味と役割り

- なぜキュレーションが注目されているのか -

 

数年前からソーシャルウェブ界隈で頻繁に耳にする「キュレーション」。

ここ最近、よりいっそう注目が集まっています。

「キュレーションの定義は? 」「どこまでがキュレーションの範囲?」など、いろいろな疑問や意見もあると思いますが、そもそも「キュレーションとは?」という方はまずコトバンクの「キュレーション」を見てみてください。

キュレーションとは (コトバンクより引用)

IT用語としては、インターネット上の情報を収集しまとめること。または収集した情報を分類し、つなぎ合わせて新しい価値を持たせて共有することを言う。キュレーションを行う人はキュレーターと呼ばれる。

(略)

キュレーションされたものは、プログラムなどで自動的に収集する従来の検索サービスの検索結果と比べて、「不要なものが少ない」「センスが良い」などといった理由から人気が高まっている。

 

書かれているように、"検索サービスの検索結果と比べて、「不要なものが少ない」「センスが良い」"といったところがたしかに人気の理由なのですが、私はもう一つ手前に、より根本的でシンプルな理由があると思っています。

それは、みんないよいよ「自分ですべての情報を追うことに限界を感じている」ということです。

キュレーション・ツールの分類

- タイプと特徴 -

 

「自分ですべての情報を追うことの限界」を言い換えてみます。

ソーシャルウェブにより、自分の身の回りのものごとや興味関心に関する情報の流通量と質が格段に増えているのに対し、時間は相変わらず1日24時間しかないし、手足も2本ずつしかないし、脳みそもどうやら年と共にキレを失ってきている…。そんな風に感じている人も多いのでは? (私は感じています・・・。)

しかし、単純に追うことを諦めるには惜し過ぎる高価値情報が、日々ソーシャル上に飛び交っていることを、私たちは知っています。 そこで、多数のキュレーション・ツールが出回り、脚光を浴びている現状へと繋がるわけです。

それでは、どんなキュレーション・ツールがあるのか、ちょっと思い出しながら並べてみます。

 

 

また、ちょっと違うタイプのものとして、個人が運営するメルマガやオンライン・サロン、Facebookなどのグループ/コミュニティーにもあてはまるものが多そうです。

以下の3つの切り口で見ていくとそれぞれの違いと特徴が理解できると思います。

 

●人間(キュレーター)の関与度合い(人手かツールのアルゴリズムか)

●データソースの幅の広さ(ブログ中心 / ツイッター中心 / ニュース中心 / 画像中心 / web上のありとあらゆるデータ)

●軸のタイプ(テーマ別 / 人別-ユーザーのソーシャルグラフ / 人別-ユーザーのソーシャル上の履歴)

(誰か、マッピング図を作ってください! 軸が3つあると作り方がよくわからなくて…)

 

「フロー情報をストック情報にする」のがキュレーションの役割の一つだと思いますが、キュレートされたページそのものがフローに乗ることも多く、うまく循環するケースも多いようです。 (「フローとストック」の関係性や意味合いに関しては別記事『エンタープライズソーシャルとビッグデータ』にも書いています)

 

情報の非対称性

- ストラクチャーホールと情報優位 -

 

突然ですが、ストラクチャーホール(「ストラクチャルホール」「ストラクチュアルホール」などと呼ばれることも)という言葉をご存知でしょうか?

私も最近読んで大変感銘を受けた入山章栄氏のベストセラー『世界の経営学者は今なにを考えているのか』での説明を参考に、例を用いて説明します。

Aさん、Bさん、Cさんの3人がいて、「BさんとCさんの両方の存在を知るAさん」と「Aさんしか知らないBさんとCさん」がいる状態では、直接のやり取りのないBさんとCさんよりも、情報インプットに2つの経路を持つAさんの方が「情報優位」に立って得をする。

このBさんとCさんの間に生まれた隙間がストラクチャーホールであり、それを利用するAさんの情報優位性は高いとする。

 

どうでしょうか。

前述の『世界の経営学者は今なにを考えているのか』では、このストラクチャーホールと情報優位性が、社員の給与の差につながるのではないかという考察が行われています。

ここで、今回のエントリーを書くきっかけをいただいた、森口静香さんのブログ記事『社内にキュレーションは必要か』から、一部引用させてもらいます。

管理職は、経営の情報、業務に必要な情報、個人の育成に必要な情報などたくさんある情報を、情報の受け手にわかりやすく、編集して伝えていた。

(もちろん、様々な尾ひれがついていたこととは思うが。)だとすると、それは、キュレーションの一種なのではないだろうか。

 

私も、この「管理職とはキュレーターであった」という話に強く深く頷く自分がいます。

しかし一方で、でははたして今、どれだけすばらしいキュレーター(管理職)が、企業の中に存在してるんだろう? と考えてしまいます。

イメージ

取捨選択せず垂れ流す上司+メール洪水に溺れる部下 情報を溜め込み流さぬ上司+判断できずに混乱の渦へ

ソーシャルウェアは「社員のつながり」によるキュレーション

- 駄目キュレーターから自分を救う -

 

上の画像は多少誇張し過ぎかもしれません。

でも、いろいろな企業の方たちと話していて、「メール洪水」と「上司の役割り」という話題が必ずと言っていいほどあがります…。

仮に、あなたがこうした「垂れ流し上司」や「溜め込み上司」というキュレーターの下にいたら…。どうやって良い仕事をしていきますか?

あなた自身が、社内の情報やナレッジを、自ら効率よく入手して判断していく必要があるります。

では、どうやって?

社内のキーパーソンと深く繋がる、あるいは自分がキーパーソンになる。

それも一つの手でしょう。

しかし、すぐに誰もができることではありません。

そこで、自社内に置かれたエンタープライズ・ソーシャルウェアが活躍します。

 

キュレーション・ツールのほとんどがソーシャルグラフソーシャルメディアでフローする情報を元にしているように、自社ビジネスや自分たちの業務に関連する情報がもっとも流れる場所があれば、それがキュレーションのためのデータソースとなります。

そして、自らが情報をキュレートしていくのと同時に、自分がつながっている同僚や仲間が、良い情報が目に付きやすいように「いいね!」などで絞込みをしてくれるのです。

(「いいね!」が社内の情報の質を高めていくしみに関しては、別エントリー『エンタープライズソーシャルとビッグデータ』にも書いています)

 

ただし、ここでポイントになる点が2つあります。それはエンタープライズ・ソーシャルの活性化と、中身の問題です。

つまり第1に、十分な量の情報、データが発信されている必要があるということ。

そして第2に、自社ビジネスに関係のない話ばかりでは、有用性が低くなるということです。

上司に代わる社内キュレーターの登場を待つのも手ですが、社内の仲間たちとの組織に縛られない繋がりが、自然とキュレーションの役割を担ってくれるのがエンタープライズソーシャルです。

森口さんが『社内にキュレーションは必要か』で書かれているように、私たちは『捨てる力、スルーする力』を養っていかなければなりません。

ただそれを、管理職とキュレーション・ツールに頼って強くするのではなく、仲間に頼り、共に上げていくのがエンタープライズ・ソーシャルではないでしょうか。

 

Power to the People! Happy Collaboration!