Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

カナダドライ

 

まさか、私が、このことでこんなに困る日が来るなんて。そりゃ今までだってコンビニとかスーパーで買うときに、少しだけ罪悪感みたいなものを感じることもあったけど…でもそれにしてもこれってまさかだし、まさか過ぎる!!

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オフィスが新しくなるって聞いたときも、初めてその計画書を見せてもらったときも、それはもう「サイコー過ぎるでしょ!」って興奮したわよ。

「カッコいいオフィスでテンション上がるわね。それに、見た目だけじゃなくて環境にも優しいオフィスって、これからの時代にぴったりって感じ。」ってクールに言ってたけど、内心では「キャー♪」って叫んでたわよそりゃもう。職場じゃそういうキャラだと思われてないから出さなかったけど。

北欧風のオフィス家具や室内植物多め、これって自慢できるし気持ちいい。室内の熱効率向上や無駄な電力消費カットのためのテクノロジーも入っているって、なんだかエコでイケてる会社の仲間入りを一挙にしたって感じ!

…でも、まさか「環境に優しいオフィス」が、こんなに私に厳しいなんて…。 私は、ただ、大好きなカナダドライを好きなときに飲みたいだけなの。それだけ。 それなのにどうして、どうしてこんなに不便な思いをしなちゃいけないの?

 

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プラスチックが環境に大きな悪影響を与えているなんてことくらい、いまどき小学生だって知ってる。海がマイクロプラスチックで一杯で、そのうちお魚が食べれない日が来るかもって言われていることだって理解している。

それから、最近、全然似合ってないジーンズとか履いて会社に来るようになったうちの社長やら役員たちが、みんなでお揃いで付けてるカラフルなバッヂが、「環境に優しい会社アピール」のものだってこともこないだ雑誌で読んだから知ってる。

 

でも、だからってどうして、私が会社でカナダドライを飲めなくなるのよ?

なんなのその「オフィスへのペットポトル飲料持ち込み禁止」って?!

間違いなくちゃんと分別して捨てるし。なんなら飲み終えたペットボトル家に持ち帰ったっていいし。

それなのにどうして「オフィスへのペットポトル飲料持ち込み禁止」なのよ!

 

……あーあ。私もクニちゃん先輩みたいにコーヒー中毒だったら良かったのになぁ。それかりんごジュース中毒とか。せめてコーラ中毒なら、瓶とか缶のもあちこちで売っているのに。

え? …知ってる。カナダドライにも缶のがあるって。

でもオフィス5分圏内のコンビニの、どこにも置いてなかったの。ほんっとコンビニってどこも同じ品揃えで。どこか一軒くらい缶のカナダドライ置いてたっていいと思わない?

 

そう言えばこないだ、ハイネケンだったかカールズバーグだったかが、紙製のボトル入りビールを開発中だって、どこかのニュースサイトに載ってたわね。これ、カナダドライだって紙パック入りにできるってことよね。早く広まらないかなぁ。できれば今週中くらいに…。

とりあえず今週はどう乗り切ろうかしら? 遠くのスーパーまでダッシュして一気飲みして帰ってくるのは、もう辛くてヤダ。

 

これまでただひたすら臭くて迷惑としか思っていなかったけど、なんだか今は、喫煙者の人たちの気持ちがちょっと分かるかも…。

オフィスの喫煙所がなくなって外に出され、次にそれも廃止されちゃって、今じゃ「業務時間中の喫煙禁止」ってなって…。

「みんなに迷惑をかけない吸い方」だってあるかもしれないのに。…あ、でも最近は三次喫煙なんていうのも言われてるらしいから、やっぱりないのかも。…でもだからって「禁止」で終わらせるのってどうなのかしら?

みんなで考えれば、みんなが納得する方法がもしかしたら見つかるかも。とにかく、今なら喫煙者のみんなと気持ちを分かち合えそう。

 

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実は、これまで数えるほどの相手にしか言ったことがないんだけど、私がカナダドライ中毒になったのにはある出来事が関係している。

昔、私が中学校2年生になるまでうちにはおばあちゃんが一緒に住んでいて、自営業でいつも忙しくしていた両親の代わりに、毎朝毎晩私のごはんを作ってくれて、いつも一緒に2人だけでごはんを食べていた。

おばあちゃんはうちの両親よりもずっとハイカラな人で、若い頃にはパリで暮らしていたこともあるらしい(「おじいちゃんとは違う人と同棲してたこともあるの。でもこれは2人だけの秘密よ」って、いつも言ってた(笑))。

そんなおばあちゃんが、ごはんの時いつも飲むのがカナダドライだった。食事中に、お茶みたいにゴクゴク。洋食でも和食でも、どんなごはんにもカナダドライ。今考えると、なんだかちょっとハンバーガーとコーラのトランプみたい?

そして私も、いつもおばあちゃんにちょっと分けてもらって飲んでいた。

 

中2の冬休み、私は友だちに誘われて生まれて初めてスケートに行った。朝ごはんの時からソワソワしていたのは、初めてのダブルデートも初めてだった。

おばあちゃんがニヤニヤしているのが恥ずかしかった。それで、えーっと、デートのことは置いておいて。

いつもよりちょっと帰りが遅くなって、7時半ころに帰宅して玄関を開けたら、そこにおばあちゃんが倒れていた。顔が真っ白だった。

キャーって大慌てで両親を呼びに行こうとしたら、おばあちゃんが目を開いて「きっともうこれが最後だから。先にカナダ持ってきて」って小さな声で。大急ぎで冷蔵庫から取ってきたら、ほんの少しだけ飲んで、っていうか舐めて…。

それがおばあちゃんと話した最後の言葉だった。おばあちゃん、いつもカナダって呼んでた。

 

その後、私はカナダドライを見ると涙が止まらなくなって、次にカナダドライを実際に飲んだのはそれから9年経ってからだ。エドモントンの大学に留学して、好きな人ができて、一緒に暮らすようになって…。

ちょっと待ってて。この話をするにはやっぱりカナダが必要。取ってくる。

 

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この冴えない話はすべてフィクションです。実在の組織や人物とは一切直接的な関係はありません。

最近、周りに「ペットボトルで飲んでる人とは付き合い辞める」とか、「ペットボトル持ち込み禁止オフィス」とか、「プラスチックストロー置いてる店は絶対お断り」とか、そういう人やケースに遭遇する機会が多くて、なんかもやもやするなぁって気持ちをそのままもやもやするストーリーにしてみました。

もちろん、完全拒否するのも自由なわけですが、いろんな事情もあるし、聞く耳持たない感じというかゼロかイチかに簡単に分けようとするのはどうなのかなぁって。

Happy Collaboration!