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Bespokeインタビュー1 | 未来洞察とは、能力であり意思であり行動である

 

Bespokeのファウンダーの2人ニックとルネへのインタビューが、北欧のクリエイティブ専門ウェブマガジンのN WINDに掲載されています。

軽い気持ちで読み始めたのですが、内容がちょっとびっくりするくらい濃くて素晴らしい!

インタビュアーはこの雑誌のファウンダーの1人でもあり、自身もクリエイターであるギードレさんという方なのですが、なんというか、自分がその場で話を聞いているような、彼らが三人で話をしているのを少し離れたテーブルから見ているような気分になりました。

頑張って全訳しました。これから数回に分け、すべての好ましい未来を作りだそうというフューチャーデザイナーにお届けします。

 

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あらゆる状況において、熱交換の発生しないところ、つまり摩擦のないところでは、未来は常に過去とまったく同じふるまいを見せる。熱の存在しないところに未来は存在しない。摩擦を発生させることや行動を起こすということは、継時的変化を発生させることを意味する。すなわち、未来は行動により作りだされる。

この、実に興味深い考察は、コペンハーゲンを拠点に戦略的未来予測とエクスペリエンスデザイン — 要するにフューチャーデザインだ — を手がけているスタジオBespoke(ビスポーク)の『フューチャーデザイナー・ブック』に書かれているものです。

今回、BespokeのファウンダーであるNicolas Arroyo(ニック)とRune Toldam(ルネ)の2人に話を聞いてきました(上記写真の右がニックで左がルネ)。

 

■ 未来洞察とは、能力であり意思であり行動である

さまざまな点で驚かされることの多いBespokeだが、ビジネスを前面に出していないのにビジネス面で成功を収めていることにまず驚かされる。

2人が出会ったのは、デザインとビジネスのハイブリッド・スクールであるカオスパイロットだ。その後すぐ、仲間となった彼らはビジネスを始めた。それから5年という短い期間で12名のチームとなったBespokeは、現在、世界的な企業や団体との結びつきを深めている。

いくつかの例を挙げよう。イケアとともに未来の学びを探索した。スウェーデンに本拠を置く世界最大級の家電メーカーエレクトロラックスのデジタル変革を計画した。日本のポーラ・オルビスグループとともに未来の美の風景を研究している。そして、日本、デンマーク、ドバイ、ブラジル、スペインでフューチャーデザイン・コースを開催し、ときおり前掲のカオスパイロットやスウェーデンのハイパーアイランドというハイブリッド・スクール、コペンハーゲン大学ヨーテボリ大学でもレクチャーを行なっている。さらに、プロジェクトの合間にはアーティスティックなコラボレーションに参加することも。

夢と情熱、そして好奇心をエンジンに動く彼らだが、同時に目的志向でシステマティックなチームとしても機能している。そんな彼らは、自らが生みだしたフューチャーデザインという分野やメソッドを常に俯瞰し、ときに自らゼロベースで書き換えることすらもあるという。常に好奇心いっぱいで、冒険心と探究心を正面に掲げながら進んでいく。それがBespokeなのだ。

 

■ 僕たちは、人びとが彼ら自身の未来を創りだすのを手伝いたいんだ(ルネ)

私たちはインタビューを2度行なった。最初はスカイプで(何度やっても慣れないものだ)、2度目はBespokeのオフィスで(「一度来てみれば雰囲気が分かるよ!」)。そして「今ここ」を共有した2度目の会話で、私たちは多くを無意識のうちに共有した。

この2人が本物の共同体であることが私にははっきり分かった。彼らがなぜ成功したのか、私の中では明確だった。2回のインタビューを通じ、ニックとルネは彼ら自身と顧客にとって最も重要なインサイトでありメソットである「疑いの余地がない」指針へと何度となく回帰した。彼らの意思決定のエートスには「ライフモデルはビジネスモデルに先立つ」という彼らのルールと同様の、気高さと高潔さが、好奇心と誠実さがあった。

Bespokeとかれらのフューチャーデザインの中心には、好奇心と誠実さというどこか相反するような推進力と考え方が燦然と輝いている。「フューチャーデザイナーであるということは、好奇心いっぱいの探検家であるということなんだ。でも同時に、目的意識を持って体系的にデザインしていくということも意味している。好ましい未来を創りだすために、今日からアクションを開始するんだ。」

 

彼らとの対話の前、私はストックホルムのデザイン会社ドーベルマンで、グローバルリーダーたちと会っていた。彼らは皆口々に、好奇心だ、人と地球に優しいデザインだ、と繰り返していた。だが、私がBespokeで発見したのは、彼らのそれとはまったく異なるパラダイムだった。

彼らの考えは、ソリューションではなく人間をフューチャーデザインの中心に置くことにより、熱を高めるというものだ。未来が熱交換が行われる際にのみ存在するのであれば、私たちの見る夢 — 心から望むものや情熱、そして私たちの価値観 — こそが未来を創る熱ではないのか?

「僕たちは、人びとが彼ら自身の未来を創る手伝をしたいんだ。僕たちはトレンド予測会社じゃないし、"いいですか、これがみなさんが追うべきトレンドです”なんてものは、まったく信じちゃいないんだ。だってそんなの、誰かが作りあげたソリューションでしかないし、それを追うなんて他の人が決定したことをやることに過ぎないじゃないか。」

人の熱の力を見くびってはいけない。産業革命以降の人口の指数関数的増大と相まい、またそれと同様に、人の先見性や欲望こそが地質学的に地球に巨大な影響を与え、生態系にも大きな変化を与えているのだ。

熱を導くことが重要なのだ。では、どうやって、人びとと共により良い未来を創っていけるのだろうか?

 


 

第2回に続きます。

Happy Collaboration!

 

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