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Bespokeインタビュー4 | 企業なんて存在しない、人だ

 

Bespokeファウンダーのニックとルネへのインタビュー第4弾です。

オリジナルは、北欧のクリエイティブ専門ウェブマガジンのN WINDに掲載されています。

今回の記事を訳していて、今年の3月に彼らのオフィスで「共通言語を作る儀式」をやったときのことがくっきりと頭に浮かび上がりました。今思い出しても泣ける…。

すべての好ましい未来を作りだそうというフューチャーデザイナーにお届けします。

 

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■ 自分の道をデザインする

Bespokeの『フューチャーデザイナー・ブック』には、フューチャーデザインの事例、考え方、ツール、そして方法論が書かれている。そこに書かれているのは、Bespokeが「自分たちが存在していたい未来のインダストリー」を描き出すために取り組んできた中で、彼ら自身が見つけ出したメソドロジーだ。

「建築とデザインの影響が感じられると思うよ。僕らは視覚に強くこだわりを持っているんだ。僕らはメソッドとアイデアをビジュアル化し、ツールとモデルを作成して環境を整え、実際に質問をしていくんだ。」ニックはメソドロジーがBespokeにとってどれほど重要なバックボーンとなっているかを説明した。 常に調査し、テストし、それから理解する。Bespokeは自らのビジネスをデザインしていくよりも先に、未来に取り組む方法をデザインしていた。

「ソリューションなんて無駄さ。すべては正しい問いをみつけること、あるいは正しい問題を明らかにすることなんだ。それさえきちんと理解できれば、正しいソリューションなんて何百とある。逆に言えば、誤った問題に対して完璧なソリューションを作り上げてしまうことほど、悲しいことはないよね。」

Bespokeはまた、自分たち自身のチームや社外の協力者との関係作りについても独自のビジョンとメソッドを持っている。彼らは真剣に、物事に対する共通言語を作るのだ。 英語をしゃべるだけじゃ不十分だとルネは言う。「実際、僕たちには共通言語を作る必要があるんだ。それは言葉だけではなく、お互いを導き合う、そしてフォローし合うためのもので、そのための適切な言葉でもある。」 Bespokeのメンバーは全員、カオスパイロットのプロフェッショナル・クリエイティブ・リーダーシップコースの受講者だ。ルネはカオスパイロットのCEO、クリスター・ヴィンダルリッツシリウスのこの言葉が一番好きだと言う「最後にものを言うのは、一人で立っていられるかではない。横に並んで一緒に立っている間に回復することができるかどうかだ。」

 

■ 企業なんて存在しない、人だ

Bespokeは、フューチャーデザインの中心に人間を置く。ニックとルネにとって、あらゆるものの中心にあるのは人間だ。常に温かく人と接する彼らのスタンスは、関連業界によく見られる少々ピリピリしたドライな感じとは驚くほど異なる。 ニックは、彼らがビジネスをスタートした頃の、とても美しいストーリーをシェアしてくれた。

「僕らにとって、もう一つ本当に重要な要素は人間関係なんだ。僕らが最初に一緒にしたことは、僕らがどうやって一緒に働いていきたいか、そしてそれが僕らと世界にどんな意味をもたらすのかを、マニフェストとして紙ナプキンに書くことだった。声明文の中で、最も大切だったものの一つが”ビジネスより友情”。僕らの友情にヒビが入るようなことは決してしないよ、むしろ深めていくんだ。僕らは一緒に働く人たちにもこのマニフェストを用いているんだ。僕らは顧客のほとんどと友人になる、あるいは何らかの仕事を超えた関係性を結んでいる。この関係性があるからこそ実現することができたプロジェクトもあるんだ、信頼があるからこそ進められたものがね。僕らには相手構わず売って売って売りまくるなんてことはできないよ、だって人間と一緒に仕事をしているんだ。だからこそ楽しいんじゃないか!」

 

ギードレ: あなたたちは、一緒に仕事をしているのは企業ではなく人だと言うけど、それってとても確信的よね。

ルネ: 企業なんて存在しないんだ、人さ。君の言う通り確信してるんだ。人がプロジェクトに決定的な違いをもたらしているんだよ。言葉が悪くて申し訳ないけど、バカたれどもと仕事するのはお断りだよ。相手がNASAだろうとなんだろうと知ったこっちゃないよ。悪いけど、そいつがひどい奴ならお引き取り願う。だって僕たちの仕事は「共に」進めるものだからね。競争の激しいこういう業界じゃ珍しいのかもしれないけど、僕らのスタンスは明確だ。

ニック: バカたれお断り。

 

ギードレ: ブランドも存在しない?

ルネ: 論理的に言えば、ブランドなんて存在しないとは言えないね。でもブランドって、人びとによる構造に過ぎないとも言えるよね。結局最後には、僕たちの実験の背後には常に人間がいるんだよ。

ニック: これは昔から話していることなんだけど、パタゴニアが僕らが憧れるブランドなんだ。だってあそこで働いている人たちは、本当に全員アウトドアを愛しているだろ。だから店を閉めてサーフィンに行く。ブランドは、中にいる人たちによってオリジナルで息づくものとされていくんだ。

 

ギードレ: 正直言って、私はあなたたち2人の共に働くことへ想いの深さに胸を打たれているの。でもどうすれば、それをクライアントやパートナーにも拡げられるのかしら?

ニック: 即興芝居をするようにやるのさ、ほら、舞台の上でお互いが相手を輝かせようとすればいいんだよ。僕は君が輝くようにする、君は僕が輝くようにする、そうすればとても素敵なことを生みだせるんだ。僕たちはそれをチーム内でもするし、クライアントやパートナーともする。僕らの仕事は彼らを支援して輝かせることなんだ。だから僕らの仕事の多くは、静かに後ろに控えることなんだ。

ルネ: 僕たちは心から彼らに興味を持っているんだ。だから僕らが欲しいものややりたいことを押し付けるんじゃなくて、彼らが本当に欲しているものを理解することが重要なんだ。そして間にあるものを見つけ出すんだよ。

 


 

彼らと一緒にワークしているときのあの感じ、あれは一体なんだろう? と思っていたのですが、この「相手を輝かせようとしている」という言葉に思わず膝を打ちました。次回、最終回です。

Happy Collaboration!

 

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