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ミームと両論併記とグレーゾーン - メディアミートアップ vol.1から

「自分のような個人で情報発信している人間が、どれぐらいの意識で日々の情報発信をすべきなのか正直悩んでいます」 「メインテーマは、メディアにかかわる人の情報発信をする際のあり方や、倫理的に守るべき境界線の話」

-- アジャイル・メディアの徳力さんのこうした問題意識からスタートしたイベント「メディアミートアップ vol.1:ヨッピー+古田編集長(Buzzfeed)」に先週参加してきました。

ヨッピーさん古田編集長徳力さんのお三方によるディスカッションは、長年ウェブメディア業界で問題意識を持ち続けてアクションを取ってきた方たちだからこそな話が多く、これまで自分が気づいていなかった問題点や、意識していなかった着眼点を頂ける刺激的なものでした。

 

peatix.com

 

イベント終了直後に以下のまとめページとTogetterのページが公開されていたので、ブログには書かなくていいかなぁと思っていたのですが、ここ数日、改めてソーシャルウェブ周りの倫理観や境界線がいろいろと議論を巻き起こしていたり、個人的にも日常生活の中で自分の倫理観や境界線を問い直されるような出来事があったりして、「やっぱりあの日会場で感じたこと、自分のメモに書いておいたことをブログに記録しておこう」と思うようになりました。

そんなわけで、イベントの全体感からは少々外れる感じかとは思いますが、自分に響いた言葉を書いておこうと思います。

 

イベント全体観を知りたい方は、こちらがオススメです。

narumi.blog.jp

togetter.com

 

■ 日本にミーム文化が育たないワケ

インターネット・ミーム(Internet meme)とはインターネットを通じて人から人へと、通常は模倣として拡がっていく行動・コンセプト・メディアのこと (Wikipediaインターネット・ミーム」より)

日本では、このインターネット・ミームが、著作権の問題と結びついて育っておらず、それがネットメディアの成熟化を遅らせているのではないか、という話です。

オリジナルの映画やミュージックビデオの一部をコピーされたりパロディーに使われたりしても、著作権利主が痛くない形でむしろメリットの方が大きいようであれば、積極的にどんどんやっていいむしろやって貰いたがるそうです。そして、それに対して直接関係のない周囲がガチャガチャ言わない、と。

 

それに比べ、日本では完全に利害の外にいる第三者が「これは著作権的に如何なものか?」と口を挟んでくるので、本来はパロディーをする側もされる側も、そしてそれを見て楽しむ第三者側も全員がハッピーなはずなのに、一人もハッピーになれないという…。なんだか、すごくもったいない話ですよね。

著作権はとても大切だけど、「著作権者を保護する」という本来の目的を(少なくとも個人レベルでは)もっと強く意識した方がいいのではないかと思いました。

 

他人の得は自分の損ではないですからね。Buzzfeedさんの「クソ野郎になるな。元コンテンツへのリスペクトがないものはダメ。使われたほうがハッピーでないものはダメ」はとてもステキだなと思いました。

 

■ 両論併記はお茶を濁すばかり?

「両論併記」自体は良くも悪くもない。報道として、あるいはニュースとしてそれぞれの意見があることを知ってもらうための方法。ただし、「婦女暴行」とか「同性婚」などの、明らかに「両論」とならないもの、どちらか一方の意見が正しい事象についてはBuzzfeedは片側に立つ。

— これは当たり前のように聞こえるかもしれないけど、「同性婚は自然の摂理に逆らう行為を助長する」とか「人類の未来を考えると好ましくない」とか、いまだにそういう意見に引きづられて慎重過多になっている組織やメディアが多すぎると思っていたので聞いていてスカッとしました。

 

「被害者にも責任が…」とか、「古くからの慣習だから…」とか、ダメなものはダメ。

それが悪であれば「それは悪だ」ときちんと言うべきだと私も思います。

 

■ それは正義か? ユーザーに利益をもたらすのか?

それが正義であれば、よく分からない理屈や現段階の法律に負けたり折れたりせずに貫けば良い。長期的に見れば裁判に負けて罰金払うくらいのことなんてどうってことない」とヨッピーさんが熱く語っていました。。

また、「インターネット上のトラブルは、法も判例もまだ整っていないものが多いから、自分で判断するしかない。結局それが世の中の役に立つのか、そしてそれはユーザーに利益をもたらすのかどうかがポイント」とも。正直、これがこの日一番刺さりました。

 

はたして、俺はそこまでちゃんと貫けているかな?

「裁判に負けても書き続ける、声をあげ続ける」って言うのは、当日徳力さんも言っていたように実際にはかなりハードルが高いことだと思うけど、それくらいのスピリットは持っていたいですよね。

 

また、「YouTubeニコニコ動画が生き残れたのは、ユーザーに絶対的な利便性を与えることで、彼らの絶大な支持を受ける存在になっていたから。だから潰されることなくグレーゾーンを乗り越えられた。これはAirBnBとかUberとかも同じ」という話もすごく興味深かったです。

シェアリング・エコノミーに括られるサービスの多くは、いろんな観点で結構グレーなものが多いです。これはもう「既存の体系を崩していくもの」が持つ宿命みたいなものじゃないかと思います。

ここできちんと生き残り、社会に認められるプラットフォームとなっていくかどうかは、そのシェアリング・サービスが「公共の利益」に基づいているかどうかにかかってくるんじゃないでしょうか。

 

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最後に、徳力さんの言葉を。

「グレーゾーンを、グレーだからと攻めるのか、グレーだから攻めないのか — 本当に報道をやっている人からすれば答えはシンプルなんでしょうね。」

これは、報道に限らず、発信者やサービス提供者すべてが自らに問うべきものなんじゃないでしょうか。

Happy Collaboration!