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読書メモ『SDGsがひらくビジネス新時代』

竹下 隆一郎さんの書かれた『SDGsがひらくビジネス新時代』を読みました。

 

お名前はずいぶん昔から知っているし、オンラインでは文章も読んだことがあったと思うんだけど、まとまったものを読むのは初めてでした。

著者の体温を感じるようなパーソナルな話もいくつか書かれていて、とても「腹落ち」する本でした。

 

前半はふんふん…って感じで読んでいたんですが、3章あたりから「なにこれ!? 『言葉にすごくしづらいところ』がわかりみ高く書かれてる!!」という感じになり、4章から最終章までは怒涛。

「分かるでしょ? こういうのってほらアレなんだよ。ね、分かるでしょ?」的な、相当「通じる相手」にしか伝えられなかったような話がしっかりと書かれています。

 

ある程度のウェブ界隈の大きな出来事や流れを掴んでいる人の方が、著者が事例的に出してくる話や、それに対するオンライン界隈や世間の声が明快にイメージできて「掴みやすい」んじゃないかと思います(ただ逆に言うと、そういう「最近のオンライン界隈の流れ」を大掴みしたい人にもちょうどいいのかも)。

ちょっと乱暴な紹介の仕方だけど、本に出てくる「登場人物」を見ると、上で言わんとしていることが掴みやすいかも?

グレタ・トゥーンベリ、能條桃子、吉田鋼太郎、牧野圭太、青野慶久、辻愛沙子、ムハマド・ユヌス…。(敬称略、順不同)

 

もう少し内容に触れると、この本のタイトルは『SDGsがひらくビジネス新時代』という、かなり「良い子感溢れる感じ」ですが、おれ的にはSDGsにしっきり来ていない人だったり、胡散臭さを感じている人だったりに向いている一冊だと思います。

そして「SDGsとビジネス」というタイトルではありますが、裏テーマは「SNSアイデンティティ」かな、と。

…おれがこの本にタイトルを付けるなら『SDGsアイデンティティとビジネスを融合させるのか(対立させるのか)?』かな。…売れなそうだ…。

 

ところで、最後のあと書きに、つい先日読んだ『三行で撃つ〈書く、生きる〉ための文章塾』に続いてまたもや高久潤さんのお名前がありました。

朝日新聞社の高久潤記者が、私にインタビューしてくれ、その録音をもとに、休みの日に一気に書いた(…)執筆前から、しかも当代一流のメディア人という「取材社兼読者」が存在したことは望外の喜びである。学問とジャーナリズムを行き来する高久さん、ありがとうございます。

 

そんな高久さんのインタビューはこちら

www.asahi.com

 

「どんな本だかさっぱり分からなかったよ」とご不満の方に、最後に少しまとめて引用を。

 

インターネットは「私」という個人のメディアとして語られがちだが、「私たち」というアイデンティティを形成するメディアだったのだ。ここで注意が必要なのは、さまざまな「私たち」がこうして形成されたとき、異なる価値観を持つ「私たち」同士が衝突する可能性もあるということだ。

 

経済がアイデンティティによって回るようになれば、金銭的な「持てる者」と「持たざる者」だけでなく、「正しい者」と「正しくない者」という分断をも生み出す(…)民主党は社会的弱者に口では理解を示し、多様性や労働者の権利重視をうたっているのに、実際はそうした人の尊厳を上から目線で踏みつけるようなことを行なっていた。「意識」が高く、「正しい」消費をしている人たちの行動は、一つ間違えばこれと似た構図に陥る恐れがある

 

SDGsに取り組むということは、さまざまな社会問題が抱える矛盾と向き合うことを意味する。これまでビジネスの問題ではないと考えられていた人権問題や政治思想にも、経営者なりの考えを持っていないといけない(…)ところで、これを読んでいるあなたの会社は、ミャンマーのクーデターについてどう思っているのだろうか。上司や経営者は社内や社外に向けて何か発信をしているだろうか。
何も言っていない? それともあなた自身がそういう質問をしていない?

 

環境問題や人権尊重などがビジネスの主要課題となり、企業価値が有形資産から無形資産へとシフトし、グローバル化によってステークホルダーが増えてきた(…)SDGsの時代となって、私たちは「見えないもの」に突き動かされている(…)倫理や哲学など抽象的な「見えないこと」の思考に慣れていない人ほど右往左往する。

 

Happy Collaboration!