Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

『UX × Biz Book』読書 & セミナー参加メモ

先日、『UX × Biz Book~顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン~』という本を買い、出版記念セミナーに参加してきました。

参加理由は主に2つです。

1つは、共著者の中に名前を存じ上げている人や知人・友人が数多くいたこと。ここ数カ月で急速に仲良くなった人たちもいれば、IBM社員向けに以前講演を依頼させていただいた方々や、10年近く前に本当にお世話になった方など。そんな方々の知見を改めて、あるいは初めて、きちんと聞いてみたいと思ったのがまず1つ目です。

そして2つ目は、私のコア業務「社内ソーシャル推進」に、UXデザインをもっと踏み込んだ形で取り入れられるんじゃないか(あるいは取り入れなければ片手落ちなのではないか)という、ここしばらく持ち続けていた意識からでした。

 

せっかくのセミナー参加機会を活かそうと、イベント前に本をすべて読み終えていました。

私見ですが、本と連動したセミナーは、やはり本を読んだ上で参加した方が理解が深まると私は強く感じています。セミナーで話を聞いた後に本を読み「あー、これを言わんとしていたのか」と思いあたることももちろんありますが、それは単なる「繰り返し」に過ぎないことが多く、もう一段深い理解につながることは稀な気がします。

 

さて、本やイベントの中身に触れる前に、「逃げ道作り」をさせていただきますね。

私はUXデザインについては素人です。きちんと学んだことも、学ぼうとしたこともありません。ただ、ときどきその一端に触れる機会があるのと、穴ぼこだらけの断片的な知識と興味を持っているにすぎません。

2010年くらいまで、サイト内のコーナー単位だったりもっと大きな単位でウェブの構成を考えたりする機会が頻繁にあり、系統立てて学ぶんだことはなかったものの、本や実践で得た知識で「UXを意識した風」なことをしていました。

そしてここ数年は、デザイン・シンキングの流行もあり、ウェブとは関係ない文脈でオープン・コラボレーションの学びや実践の場で、ゆるーくペルソナやカスタマー・ジャーニーマップ作成などを経験する程度のUXデザインとの関わりでしかありません。

 

そんな私が書く文章ですので、ここからは差っ引いて読んでいただくようにお願いします。

 

読後の感想は、「ずいぶんあっちこっち行ったなぁ。最終的には1冊の本としてまとまっていると思うけど、でも、誰も”超満足”とは言わないだろうな」というものでした。だって、UXという広大なエリアを、多数の著者が「ビジネスの現場で」という括りだけで自分の得意な分野について好き勝手に論じているんですもの…(ですからUXど素人の意見です)。

ただ、9つからなるそれぞれのChapterを1つずつバラのものとして見ていけば、それぞれが論じているポイントは分かりやすいと思います。

以下、もくじに私の簡単な主観的紹介を加えてみます:

 

Chapter1 UXとはなにか? (田平 博嗣)

UXの定義から始まり、「サービスデザイン」という言葉で語られることが多いであろう調理器具とスポーツ観戦というオフライン事例へ。

 

Chapter2 UXと顧客エンゲージメント (原 裕)

顧客がさらに新たな顧客を作ってくれるというエンゲージメント・モデルの説明と無印の担当者へのインタビュー。

 

Chapter3 UXが企業にもたらす価値 (井登 友一)

モノからコトへ、コトからサービスへ、サービスから経験へ、経験からシステムへという変遷を大局的に解説。

「ユーザー中心から社会中心へ」という世の中の志向性の変化とその背景も説明されていて、個人的には前半の山場です。

 

Chapter4 UXブランディング (明海 司)

一連の経験をユーザー中心に設計するのがUXデザインであり、それをも包含する概念がUXブランディング

 

Chapter5 Webサービス開発プロジェクトにおけるUXデザイン (塚本 洋、川田 学)

Webサービス開発にUXデザインが重要なわけ。そして事業会社がUXデザインを取り入れる際の注意事項と壁の越え方。

 

Chapter6 BtoBビジネスにおけるUX (橘 守)

UXを「顧客の視点で自社を見て、全体最適を提供する」とシンプルに捉える。BtoBのそれは課題解決でありそれをやりきること。

 

Chapter7 コールセンターにおけるUXとカスタマー・エンゲージメント (萩谷 衞厚)

コールセンターは人が直接介在するエンゲージメントの現場。単なるコストセンターではなく組織連携のハブとなり得る。

 

Chapter8 UXの採用プロセス (坂本 貴史)

UXをユーザー本来の目的達成に連なる一連のプロセスとして捉え、各ステップごとに根拠を残しながらリンクさせていく。

ビジネス上の課題に対し、ワークショップの強みを最大限に活かす方法が解説されています。後半の山場です。

 

Chapter9 オムニチャネル時代におけるCX/UX:エンゲージメント・コマース(奥谷 孝司、原 裕)

短期的なコンバージョンに引っ張られて、焼畑的な作業になっていないか? CX設計こそマーケティングの最重要タスク。

 

こうして書き出してみると、実は拡散と収束を繰り返しながら本質に迫っていくという、デザイン・シンキングでよく使われるアイディエーションのプロセスが採用されていそうな気がします。

 

 

最後に、イベントで思わずメモを取った何人かの発言を紹介して終わりにしたいと思います。

 

奥谷さん - 定量からは「聞かないと分からない」ところが見えづらい。n数の少ないところからの方がむしろ答えにつながりやすい。

 

原さん - モバイル・アプリは単なるモバイル体験やUXではなくブランディングそのもの。とりわけミレニアルズ世代には、そこで失敗すれば終わりになってしまう。

 

橘さん - 日本(人)は部門最適が得意過ぎて、むしろ全体最適の邪魔をしている。UXの課題の大半は接点と接点の「つなぎ」に起きている。

 

明海さん - B2Bは「個別最適化」のビジネスなのでUXと相思相愛になれる関係。そして今後、UXブランディングを推進する力となるのはEX (Employee Experience)かもしれない。

 

井登さん - 優れたUXは、それまでの常識と異なる「普通なら避けられるコト」を習慣化し文化としていく。それがイノベーション

 

これからも積極的にUXデザインの学びと実践の場にかかわっていこうと思います。

Happy Collaboration!