2018年から2022年くらいまで、5年ほど「旧中川」近くに暮らしていました。
そしていわゆる「コロナ禍」がスタートした2020年の春からおよそ丸2年のうち、多分半分以上の日を旧中川沿いのウォーキングに費やしていました。
その後、当時住んでいたUR物件の騒音が気になるようになって、引っ越しをしたのがおよそ3年半前。…正直に言って、旧中川への恋しさを募らせた3年間でした。
そして先日、3年強ぶりに旧中川沿いをゆっくりと散歩してきました。
引っ越してわりとすぐに、自分が理解しているよりもずっと「旧中川ウォーキング」が自分の中で大きな意味を持っていたことに気がつきました。
だからこそ、正直、再訪するのがずっと怖かったんです。なぜなら、ガッカリするのも愛しさが溢れ出すのも嫌だったから。
2年間毎日のように費やしていた時間を「つまらないものだった」って感じることも怖かったし、もう一度手に入れたいという気持ちに捕らわれてしまいそうなのも怖かった。。。
引っ越してしばらくして、こんなブログを書きました。
「いぶきやゆらぎってかっこいい言葉で書いているけど、シンプルに『生命力』だよ」って今見ると思います。
鳥も魚も植物も虫も人も、そして猫も——。3年強ぶりの旧中川ウォーキングは、みんながみんな、「生きている」姿をまざまざと見せつけてくれました。
旧中川のM字カーブを「耳」に見立てたとき、左耳の尖ったあたりにある橋の下に、クマちゃん、シロ、トラちゃん、という3匹の猫が暮らしていました。
それぞれまったく違う個性を持っていた3匹だったけど、共通していたのは地域猫としてかわいがられていたこと。通行人も多く、イタズラしようとする人も少なからずいたようだったけど、「彼らを守りたい」と思っている人たちもそれに負けないくらいいました。
おれとパートナーは、彼らと猫じゃらしで遊んだりお尻をトントンしたり、撫でさせてもらったり、ときどきはCIAOちゅ~るとかあげたりしながら、ん〜平均すると1日2〜30分くらい一緒に過ごさせてもらいました。
クマちゃんはとても人懐っこくて、すぐに慣れると遠くからで姿を目にすれば自分から寄ってきてくれるようなことも多く。
シロは体も態度もデカく、いかにも「ボス猫」って感じで威張っていながらも他の2匹の面倒を見るようなところあったり(なかったり)。
そしてトラちゃんは一番身体が小さくて臆病で、2年間通っても決して心を許してもらえることはなく、50センチ以内に来てもらえることもありませんでした。ただ1度を除いて。
橋には、猫たちの姿はありませんでした。
ただ、猫たちが今もいるかのような、張り紙や隠れ家はあって。だから、「もしかしたら今姿を見せてくれないだけで、どこかにはいるのかも?」と思い、しばらく待つことにしました。
昔、よくそれでよく姿を見せてくれたように、鍵をガチャガチャ言わせたり、「クマちゃ〜ん。トラちゃ〜ん」と呼び続けてみたり。
5分くらいして、諦めて立ち去ろうとしたところで、ニャーと小さな声が聞こえて、どこからかトラちゃんがその姿を見せてくれました。「あ、トラちゃん! トラちゃ〜ん」と声をかけ続けると、そのたび小さなニャを返してくれました。
しばらくすると隠れ家の奥に入ってしまい、もう出てきてくれなさそうだったので、諦めて立ち去ることにしました。
「よかったね。トラちゃんはいたね。」
「クマちゃんとシロは…どうしたんだろうね。」
そんな話をしながら橋から離れていくと、おれたちをジロジロ見ながら橋へと近づいていくおじさんがいました。
そのおじさんは、おれたちが立ち去ってしばらくすると、「トラ。トラ!」と呼び出し橋のたもとの傾斜に座ると、なんと、トラちゃんがその膝の上に!
…こ…これは、昔、通っていたときに唯一「自転車猫おじさん」と呼ばれる人だけができた技。びっくりしながら、おじさんに声をかけ、昔毎日のように通っていたこと、3年半ぶりに会いにきたことことを伝えました。
「自転車のおじさんいたでしょう? あの方ね、倒れちゃって、その後あちこちの病院をたらい回しにされた後、亡くなっちゃったんだよ。だからね、その後わたしが同じように餌をやりに来ているの。
シロか。あの猫はねえ、道路で轢かれて大怪我しちゃって。でも、病院に連れていってくれた人がいてね。その人がそのまま貰っていったよ。
クマ…クマちゃん…ああ。私がここに来るようになった頃には、もういなくなっていたなぁ。
今残っているのは、トラだけ。トラもずっと野良猫で10歳以上でしょう。多分、そう長くないと思うんだ。最後まで生きていってほしいねえ。」
おれたちは1度だけトラちゃんに触ったことがあります。撫でたことがあります。
引っ越しの前日、「最後のウォーキングだね。猫たちにお別れの挨拶だね」と2人で家を出て、橋の下への向かいました。そうしたら、前日はいつものように50センチ以上近づかせてくれなかったトラちゃんが、自分からおれたち2人のところにやってきて、足元にニャーと頭を擦り付けてくれたんです。
その日だけ。最後の最後の日に。
今、もう一度、旧中川近くに引っ越して暮らそうか考えています。
トラちゃんがいるうちに。