僕たちがスキャンカードをまとめあげるときには、「論理的」と「直感的」 という異なる2つのマインドセットを同時に用います。
論理的マインドセットは、機械的であり、ロジカルに特徴や違いによりグルーピングしていきます
直感的マインドセットは、より本能的に興味を惹きつけるパターンを見出すものです。
「抽象的だな」と思われるかもしれませんが、この論理と直感の2つのマインドを両方とも用いることが実際にとても効果的であると、多数のプロジェクトで示されているのです。
それぞれのクラスターの定義の仕方ですが、なによりも重要なのはその基準がチームメンバー間で同意されていることです。その定義が共有された上でグルーピングされていなければなりません。そして各グループに見出しを付けます。
見出しも定義も決めるのは自分たちです。皆さんはここに至るまでに、このテーマについていろいろと考えリサーチもしました。知識は持っています。ですから自分たちの直感を信じることが大切です。自信を持ってクラスターの基準を定義してください。
ここまでの過程でたくさんの意味づけ(センシング)がすでに行われています。なぜなら興味深い点についてお互いの視点や意識を伝え合っていますから。
ここでインサイトを作ります。この図は1つの例を示しています。
とても基本的なものですが、その分わかりやすいと思います。
左上に「オーガニック」という見出しが置かれ、その中に4つのタイトルが並んでいます。この4つはそれぞれが1枚のスキャンカードです。そしてこう書かれています。
オーガニックは新たなスタンダード | オーガニック製品やサービスは、今やニッチ向けではない。むしろこちらが標準となった
これがインサイトです。「シンプル過ぎでは?」と思うかもしれません。でも真実を言い当てているし、スキャンカードも揃い検証もされている。納得感も高いですよね。
インサイトの説明によく使う言葉があります。「インサイトはジョークに似ている。説明が必要なものは失敗作だ」。
「オーガニックは新たなスタンダード」はどうでしょうか。このインサイトのように、シンプルで、自身が明確に意味を捉えられるもの。そしてみんなに意味を伝えられるものを作りましょう。
インサイトを作るとは、新しいアイデア、あるいは結果として存在する物事と可能性のつながりの発見です。その可能性は破壊かもしれませんし、承認かもしれません。それが何であれ私たちはそのつながりの持つ可能性を探しているのです。
インサイトの言語化は重要です。まずこれまでのリサーチしたデータを自信を持ってシェアできる説得力あるものにまとめる必要があるからです。余計なものを削ぎ落とし、簡潔に説明する強力な文章にしましょう。人びとが耳を澄まして聞こうとするもの、周囲の騒音を減らすものを作ります。
最後にもう1つ重要な点は、実行可能な出発点となっていることです。興味深いインサイトであれば、人びとは興味を持ち、それをどうすれば未来へつなげられるかを考えます。
インサイトの作成プロセスにおいて、僕たちは摩擦を生みだそうとします。
異なるもの同士をぶつけ合わせるのです。ぶつかりによって、それまでに聞いたことのない新しく感じられるものを作り出します。
エネルギーがとても重要です。グループで話をしながら取り組んでいるとき、「自分たちにこれは大いに関連性があり重要なので、これをまだまだずっと続けていたい」と思うエネルギーを感じるか。同時に、相乗効果を感じることができているかも重要です。
インサイトを作る上でにとても重要な4つの問いをお伝えしておきます。
- 何が価値なのか?
- なぜ興味深いのか?
- 何の意味があるのか?
- どんな関係性があるのか?
このとてもシンプルな4つの問いが、インサイトを磨き上げます。
インサイトを作り終えたら、これらの問いをぶつけてみてください。そしてそれを反復させることで、インサイトの持つパンチ力や掻き立てる力を強め、洗練させていくことができるのです。
最後にもう1つお伝えします。インサイトは成果物であるということです。
多くの場合、インサイトは次のフェーズであるスケールにつなげる1つのブロック要素です。しかし同時に、インサイトはクライアントにとって大きな資産となる成果物でもあるのです。取り組むべきことや組織すべきことを理解して実践するためのリソースとなるのです。
インサイトは個人にも役立ちますが、企業や組織全体をナビゲートするものとして大変重要な資産となります。
インサイト作成は簡単ではありませんがきっとできるはずです。参考に1つ例を挙げておきます。
この例では4枚のスキャンカードが1つのインサイトを作り上げています。カードの中にはインタラクティブ・ミュージアムや、食事のための劇場、食や香りにフォーカスしたポップアップストアなどがあります。
このカード群の見出しは 「経験的食事」です。「体験としての食事」と呼んでもいいですね。
そしてインサイトは 「消費力の向上により、人びとは食品に対し単なる製品ではなく経験を求めている」。
食べものは単なる栄養素ではなくエクスペリエンスだということです。シンプルに感じるかもしれませんが、食品企業にとっては注目すべき点です。
「重要な4つの問い」を忘れず、インサイト作りを繰り返し行うこと。続けることで皆さんもエキスパートになれるのです。フューチャーズデザイナーになりましょう。