Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

小山さんと大川さん

小山さんは、自分に課せられた課題や難題に対する苦労や悩み、行き詰まりを上司以外に一切伝えることなく、自分の力で黙々と解いていく人でした。それこそが「デキル」ビジネス・パーソンに求められる行動だと信じて。

そして小山さんは、自分はこれまでの成果を評価され、有望な人材として評価されていると信じていました。

ところがある日、難題にウンウンと唸っている小山さんの元にやってきた上司の大川さんが言いました。 「小山君の働き方は、我が社にとってもこの部門にとってもマイナスなんだ、改めて欲しい。それに、君自身にとっても大きなマイナスだよ。」

驚いた小山さんは尋ねました。「私の仕事のスタイルが組織にとってマイナスって、大川さん、どういうことでしょうか? 常に全力で、自分のできる精一杯を出してきたつもりです!」

「小山君が努力しているのは分かっているよ。そして君自分の持つ力を100パーセント発揮していることもね。ただ…」 「ただ、なんでしょう?」

「もっと良い解を、もっと価値ある解を手に入れる方法が身近にあるのに、活用していないじゃないか。
小山君の周りには、いろんな専門性や人脈を持ったプロフェッショナルがたくさんいるんだ。彼らの力を借りれば、君の取り組んでいる問題はもっとずっと早く解けるし、もっとずっと良いものになる。 それなのに、周りに対して自分が取り組んでいることや、やろうとしていることを発信していないだろう」

「はい。しかし…」 「これは、会社から見れば有用なリソースを活用して仕事をしていないってことだ。そして本来得られるメリットを会社に提供していないということだよ。 それに、周りの社員の成長機会を奪っていることにもなる。」

ある部分には納得できたものの腑に落ちない点もあります。小山さんは質問せずにはいられませんでした。

「大川さんのおっしゃられていることは分かりました。ただ、実際にみんなに手を貸して欲しい、手伝って欲しいと四六時中声をかけたり、メールを送ったりはしていられませんよね。 私自身の実力を疑われますし、みんなだって、そんなにしょっちゅう邪魔されたら迷惑でしょうし。」
「それはそうだよ。『xxxの手助けをしてくれませんか?』とか『xxxはお得意ではないですか? ちょっとお力を貸してください』って毎日のように小山君からメールが届いたら、誰だって引くよね。 そうじゃなくて、もっとちょっとした時間のある時に、気軽に受け取ってもらえる発信方法があるじゃないか」

「はあ…。」 小山さんはそう言って下を向いてしまいました。

「どうやらその口ぶりじゃ、社内にソーシャル・コラボレーション・ツールがあるのを知らないようだね。 Twitterは知っているよね? あんな感じで社内の人とつながり、みんなに短いメッセージを伝えるマイクロブログって機能があるんだよ。 あれなら気軽に今何に困ってるとか、何に取り組んでるって言いやすいだろ。 それにマイクロブログなら、ちょっとした空き時間を見つけた相手が読んでくれるものだから、メールで『送りつける』て相手に読ませるような感覚を持たれることもないさ。」 「なるほどそうですね。でも、あれでは背景や状況など、細かい部分が伝えられないのでないでしょうか?」 「そうだな。でも、うちの会社のマイクロブログは500文字程度かけるので、結構長い文章でも大丈夫だよ。ただ、マイクロブログであまり長く書かれても、見る側からするとちょっとピンと来ないところは確かにあるな。 それならブログはどうだろう。社内の人間にしか見ることはできないから、ある程度自由に自分がどんな問題で困ってるとか、どんなサポートが欲しいかを、これまでの経緯なんかとあわせて伝えることができるよ。」

「んー。」小山さんはそう言って再び下を向いてしまいました。

「なんだい。何か言いたそうだね」

「はい。ブログを書くのにはそれなりに時間がかかりますよね。結局、その時間を業務に費やしたほうが、効率はいいんじゃないでしょうか? ブログもマイクロブログも、書いても誰も手を貸してくれないかもしれないし。」

「それはその通りだ。でも違うんだ。ただひたすら頭の中でいろいろと考え続けるよりも、人にわかるように状況を書く、つまりアウトプットを作ることで、自分自身の頭も整理できるんだよ。それだけでかけた時間の元が取れることも多いぞ。」 「なるほど」 「そしてもし、助けを買って出てくれる人が出てきてくれれば、新たに自分の時間を作り出すことができる。そこでまた別の取り組みについて発信するのもいいし、自分と同じように困っている誰かを助けることにその時間を使ってもいいじゃないか」 「そうですね。でも、手を貸してくれる人なんて、本当にいるんでしょうか? みんな忙しくて、それどころじゃないんじゃないでしょうか?」 「みんな忙しいのは事実だよね。でも『xxxについては私のほうが作業が早い』とか、『xxxさんを紹介してあげれば事はずっとスムーズに進む』とか、みんなそれくらいの手伝いなら十分やりくりできるって判断して手を貸してくれるんだ。 それに、人はたいてい手を貸してもらうと、次に自分が手を貸せるチャンスがあれば報いたいと思うものだし、自分が手を貸すことで全体の時間が早くなれば、自分の仕事に手を貸してくれる人が増えることも経験的に知っているしね。

小山さんの顔がパッと明るくなりました。 「 これまで、自分が困っているとか悩んでいるとか、そんなことを伝えたら迷惑をかけるだけだと思っていたけど、違うんですね。 みんなに助けてもらえるところは助けてもらったほうが、私の仕事はずっと捗るし質も高くなる。そして助けてもらうことで得た時間で、私がみんなを助けることができる。

考えて見れば、私たちはみんな1つの目的のために、一緒に仕事をしているんですもんね。なんだか、変に難しく考えすぎていたみたいです。 大川さん、ありがとうございました!」

10分後、コーヒーを買って席に戻った大川さんが社内ソーシャル・ツールをチェックすると、小山さんから招待メッセージが届いていました。 f:id:dubbed_pachi:20210808093703p:plain

(※このストーリーはフィクションであり、Pachiの筆力の弱さから少々中途半端なものとなっています。)

Happy Collaboration!