「問い」の大切さ(大学生CSVビジネスアイデアコンテスト)
昨日、立教大学で開催された「第3回大学生CSVビジネスアイデアコンテスト」に審査員として参加させてもらいました。
たくさんのポジティブな思いとちょびっとなもやもや感を味わったので、フレッシュなうちにアウトプットしておきます。
■ 審査員の熱量と応募者の熱量
去年も審査員をやったのですが、そのときに感じたのが「ああ、おれは応募者の熱量やこのために費やしてきたものに対して、きちんとリスペクトを示せていないんじゃないか?」ということでした。
そんな訳で今回は、7つの審査基準を、自分なりに事前に「問い」の形にしておき、それに答えてくれるプレゼンだったかをみていくことにしました。
- ビジョン・デザイン・ドリブン - なぜあなたはそのアイデアを実現したいのですか?
- バックキャスティング - この社会からあなたは何を無くしたいのですか?
- 社会課題分析と未来洞察 - 仮説検証しましたか? プロトタイプしましたか?
- 企業理解 - なぜそれをその企業がやるべきなのですか?
- ビジネス理解/ビジネスインパクト - それは持続性が高いですか? 発展性が高いですか?
- ソーシャルインパクト/持続可能性 - それは社会に何を増やしますか?
- アイデアのストーリー性と一貫性 - それが実現するとどんな景色が広がりますか?
■ 形容詞としての「大学生」「CSV」「ビジネス」「アイデア」「コンテスト」
「大学生CSVビジネスアイデアコンテスト」って、たくさんの名詞が形容詞として連なってますよね(こういうのってなんて呼ぶの?)。で、主催者側の人たちやそれぞれの審査員たちは、それらの形容詞に対して意識的だったり無意識だったりにバイアスや期待感をもってきています(私もそうです)。
おそらく、参加者はそれを知っておいた方が良いし、審査員も主催者も自分たちが何に期待や重きをおいているのかを理解しておいた方がいい気がします。というわけで…
■ 「大学生」に対する期待やバイアス
審査員は大学生に「若者ならではの型にはまらないもの」を求めています。「大人には気づけない新しいトレンドや新鮮な視点」から生まれる「ぶっ飛んだやつ」求めています。…とはいえ、同時に「大人が気にするロジカルさや数字」も求めるんだけどね。勝手なこと言うよね。
まあこれは、審査員が常にそれを求められているので、思考のくせになっちゃってると思えばいいので、参加される大学生はチラッとでもいいから「そこも考えてはいるよ」ってところを漂わせておきましょう。
■ 「CSV」の捉え方も人それぞれ
CSVは「(社会と)共有できる価値の創造」となるわけですが、「社会とって、誰とどの範囲で?」だったり、「共有って、共感でいいの参加まで求めるの?」だったり、「価値って、それを測るものさしはなに?」だったり、いろいろバラつく点はあります。
なので、参加者はこのあたりを明確にしておいた方がいいです。それをプレゼンの中に差し込むかどうかは全体のバランスによりますが、それが決まっているかどうかって言葉の端々に案外滲み出るものなので。
審査員も、結構この辺りを意識して自社や他社のCSV事例を捉え直してみると新たな発見があるかも。
■ 「ビジネス」アイデアに何を求める?
アイデアとして提示されたものに、完成度を求めるか可能性の大きさを求めるか。これはコンテストにより、そして審査員により異なるものだと思います。ちなみに、私は圧倒的に可能性をもとめるひとです。完成度を求めるべき先は「アイデア」ではなく「計画(プランニング)」だと思うから。
とは言え、ある程度のフィージビリティ(実現可能性)チェックはしてあることは出しておきましょう。 ベースとなるアイデアから別方面に広げていけること、あるいはピボットするプランも検討してあることなんかを出しておくと、評価は高くなるんじゃないでしょうか。
■ 「コンテスト」はTicket to rideなのか?
ここまで書いてきたことは、ほとんどが参加者に対する「高い評価を得るためのアドバイス」です。
読み直してみると「わざわざ私が書かなくても、誰かがもっと上手にまとめていそう…」という気もします。まあ、同じことでも、私が書くことの意味もなくはないでしょう、きっと。
で、ここでちゃぶ台返しをしますが、高い評価を得られるかどうかなんて、本当はどうでもいいんです。
だって大学生の皆さんは大学生であって、ビジネスパーソンの予備軍じゃないんですから。今ビジネスをしているんじゃなくて、これからのビジネスをしていくんですから、今の評価基準におもねる必要はないんです。
それよりも、自分、あるいは仲間の問題意識から生まれたアイデアを、どうすれば1番強く伝えられるか、その方法はなにかを考えればいいと思います。それがうまくできたかどうかの評価は、自分たちですればいいと思います。他人の意見や評価はあくまで参考でしかありません。
最高なのを出したのに、賞が取れなかったのなら、そんなの審査員がボンクラだと思えばいい。「ああ、この人たちには分からないんだな」って。あるいは、今日は組み合わせがよくなかったんだなって思えばいいんです。
とまれ、コンテストを「自分が入社したい会社にジョインするため」だったり「やりたいことをやるためのスポンサーを見つけるため」の道具として使うのであれば、賞を取ることがそこにつながる近道なのかもしれません。それはそれでまあご自由に。
■ 「問い」の大切さ
審査員の皆さまへ。自分たちがコンテストに何を期待しているのか、ちゃんとそれを参加者に伝えないと! ですよね。
「ぶっ飛んだやつ」が欲しいなら、ぶっ飛んだ問いを投げかけなくちゃ。当たり障りのない問いには当たり障りのない答えが返ってきます。ふんわりした問いにはふんわりした答えが返ってきます。
これは、自分自身への言葉でもあるんだけど…。自分の中のどこかに「都合よく便利にやらせてもらおう」って感覚を持っていたら「価値の共創」なんてできないと思う。気をつけなくっちゃ。
■ 個人的なメッセージ
しゃけ。の皆さま、私の中の最優秀賞です! 手を動かしてプロトタイピングするのチョー大事だよね!
湯川ゼミの皆さま、サーマルリサイクル問題はいい着眼点ですね。ECサイトで売れるっていうのも展開力を感じました。
松本ゼミ3班の皆さま、デプスインタビューやったのはすごくいいと思います。高校生の時からいろんな人が「まざる」のって本当に大事だと私も思っています。
こみおの皆さま、自分の「好き」を状況にはめながら追い求めるのってすごく大切なことだと思います。忘れないでね。
市原チームの皆さま、サステナブルを実現する手段を広く考えるって大切ですよね、共感します。日本でも昔はリターナブル瓶がメジャーだったのになぁ。
大崎チームの皆さま、キャッシュレスがもたらすネガティブ・インパクトとして「コンビニ募金の消失」を持ってきたのは素晴らしいです。気づきをいただきました。
アンジュ・アンジュの皆さま、自分の体験をベースにしていたのがすばらしいなって思いました。「変化対応力」がキーワードなのにも共感しました。
龍谷(2)の皆さま、「フューチャーデザイン」を推進している者として、未来からの逆算を思考のベースにされていたのが嬉しかったです。
倉田セミチームKの皆さま、お金の定義の深掘りからスタートして現実とのギャップ、対策を立てる際のペルソナの使用という流れは納得感がありました。
松本ゼミ6班の皆さま、とても丁寧に調査やデータ集めをされたんだろうなって思いました。おめでとうございます!
そして、何人かに懇親会で紹介させていただいた「プラスチックゴミと貧困問題の同時解決をブロックチェーンでスケールさせる事例」と「海運業界のスマート化」の話は、こちらのページで紹介されています。
Happy Collaboration!