デザイン思考を超えて | デンマークデザインセンターのChristianさん講演メモ
デンマークデザインセンター(DDC: Danish Design Center)のリーダーであるChristian Basonさんによる講演とQA『デザイン思考を超えて: 持続可能なイノベーションに向けた倫理的アプローチ』に現地参加してきました。
おそらく、近いうちにYoutubeか何かで動画公開されると思うので、講演の様子などはそちらをお待ちいただきたいのですが、いくつか個人的に印象的だった言葉ややり取りのメモを残しておきます。
(Youtube動画がアップされていたので、この記事最下部に埋め込んでおきました。)
● 「倫理とは、自分たちができる能力の限り搾取する方法を設計することではない。」
製品やサービスを倫理的にデザインするための「エシカル・デザイン・ツールキット: The Digital Ethics Compass」。
"The Digital Ethics Compass: Put the Human at the Center"
● 「ネットフリックスのデザイナーの最大の競争相手は『睡眠』。」
人を睡眠不足にすることが目的となっているようなサービスの倫理性とは? 私たちは考え直さねばならないのではないか。
● 現代社会では多くの若者が精神的な疾患を抱えている。
デンマークでは18歳の若者の6人に1人がメンタルの問題を、15-25歳の女性の4割が何らかの精神的な不安を感じているという。
● Copenhagenization | コペンハーゲナイゼーション。
自転車移動を中心とした都市インフラの再構築。(ここ数年はさらに一歩進んでウォーカブルシティ(Walkable City)に
● デザイン思考は手法やプロセスや道具や部屋ではない。「思考の重要性」を取り戻さねばならない。
● Q: デザインの境界線とは何なのか? A: 問題の境界線とは何なのか?
ここからは、QAタイムでおもしろかったものを。
Q: コロナはDDCの仕事や役割にどのような影響を与えましたか(あるいは与えませんでしたか)?
A: 仕事のやり方を完全に見直した。これまでの「ヒエラルキー型」から「ネットワーク型」へと変化した。各メンバーが自分のやりたい仕事を選んでそれにコミットするようにした。
つまり管理を手放し信頼を中心に据えた。
Q: デンマークのデザインのハブとして作られたBLOXに「デンマークっぽさがない」とのことだが、今後も巨大コンサル企業によるデザインブティック・ファームのM&Aが進めば、もっとたくさんのBLOXが生まれるのでは?
A: BLOX自体が悪いデザインではないけど…でも、デンマークのデザイン会社にやって欲しかったよね。そして今後も巨大コンサルのインベージョンは進むのかもしれない…。これは、カルチャー、システム、バリューが支配されることを意味しており、長期的にデザインを蝕むだろう。…
でも、ローカル色を大事にする中堅デザインファームに期待しようじゃないか!
Q: ダイバーシティとシンプリシティはどのように同居させていくことができるのか?
A: 難しい。だが、ダイバーシティをリスペクトし大切にするシンプリシティが重要だ。データは物理的な法則であるエントロピーに向かう。それを抑制させる矜持がデザイナーには求められる。
ダイバーシティとデジタルとデザインは、人びとを解放すものであるべきだ。
Q: デザインの成功はどのように測られるべきか?
A: 以前は多くの場合で「プロフィット(収益)」だったと思うけど、今、求められているのは「トラスト(信用)」ではないか。これは難しいチャレンジではあるけれど、ビジネスにおいても行政においても同様だと思う。
それにプラスして、環境と社会のサステナビリティーだ(そしてこれは計測と公表まで含めてデザインすることが大切)。
主催、共済の武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所さん、RE:PUBLICさん、ありがとうございました!
3年前もおもしろかったけど、今回もおもしろかったです。
クリスチャンさんの本読もうかな。でも、英語のこの本をガッツリ読む時間、今取れるかな??