Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

2021年の読書ざっくり振り返り

 

2021年に読んだ本は90冊でした。ここ数年、四捨五入すると90冊台で一定していますね。

来年は100冊は読みたいなー。って、これも毎年言ってる気がする。もちろん、冊数が大事ってことじゃないのはわかっているけれど、それにしてもこれでは「出会い」の確率(の母数)が低すぎます。

ともあれ、今年読んだ中での「出会い」をつらつらとピックアップしていきます。
今年も例年同様「あくまでも2021年におれが読んだ本」であり、出版年度は関係ありません。


『雨夜の星たち』 寺地 はるな 著

寺地はるなさんは、おれの1番好きな作家さんです。今年も何冊も読めて嬉しかった。

みんなだめですよ。あなたもわたしも、生きている人はだいたいだめです。

 

『ふだんづかいの倫理学』 平尾 昌宏 著

 

倫理というものは知っていたけれど「倫理学」というものの存在を知ったのは割と最近で、どんなものか理解したいなぁと手に取ったのがこの本でした。

マンガを絡めた説明がいっぱいあって、おれも昔だったら、ここで紹介されているものを片っぱしから読みたくなったんじゃないかなぁ。

「お金で愛は買えるか?」なんていう質問も出ますが、これはほとんど定義上、あり得ない話です。我々はお金で買えないもの、つまり、取り替えられないもの(かけがえのないもの)を「愛」と呼んでいるのですから。

 

『問いのデザイン』 安斎勇樹 & 塩瀬隆之 著

この本が出版されるちょっと前に、著者お2人が書き進めている本について話す公開対談イベントに参加した。そのときは正直そんなに期待感は高くなくて、発売後もしばらくは手に取らずにいたんだけど…いやー、おもしろかった。

欲しい未来を手にしたいと考えているフューチャーズ・デザイナーは読んでおいた方がいいんじゃないかな。

未来に必要な力の一つは、自分の現在地から見える範囲だけでなく、そこから少し高い位置に視座を置き、「全体状況をシステムとして俯瞰する力」です。もう一つの力は、「創造的自信」です。それは、自分の努力や過去を信じる「経験的自信」とは別に、まだ相対していない問題を前にしても自分は何かを変えることができるという未知へ対峙する自信です。この創造的自信を身につけるには、少しの背伸びを繰り返す挑戦の連鎖に身を置くほかはありません。

 

『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』 岸本 聡子 著

おれみたいな「市民活動ノービス」にとって、ヨーロッパでのこうした「コモンを取り戻せ!」という市民活動の話は本当にインスパイアリングです。岸本さんが来日する機会があるなら、ぜひ講演を聞いみたい!!

パリ市では、水道事業への市民ガバナンスを高めるために、多くの人々が「パリ水オブザバトリー」に自覚的に参画している。選挙も重要だが、選挙だけが民主主義ではないのだ。
水のように生きるために不可欠なものは、人々の共有財産として、できるだけ市民の力で管理しようという動きが始まっている。これこそが、新しい民主主義の形だ。資本の言いなりにならない、国家に任せっぱなしにしない、という市民の気概が垣間みえる。

 

『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』 小川 さやか 著

すごくおもしろいフィールドワークの書なんだけど、ここまで爆発的に売れたのは「負い目を感じることも感じさせることもない互助の仕組み」というものの存在に対する「社会の飢え」がすごいからなんだろうなぁ。

評価経済、評判資本、信用スコア、これらすべては、信用の不履行を防ぐことではなく、信用の不履行を引き起こしそうな人間を排除するアイデアである。シェアリング経済は「シェア」という言葉に覆い隠されがちだが、誰にでも開かれている仕組みでもない

 

SDGsがひらくビジネス新時代』 竹下 隆一郎 著

「良い子感」溢れるタイトルですが、内容的にはSDGsとビジネスのつながりよりも、なぜそれがガッツリとつながるのかを、インターネットやウェブメディアの潮流を絡めて紐解いてくれる本です。

ブログにも読書メモ書いてます: 

 

ところで、これを読んでいるあなたの会社は、ミャンマーのクーデターについてどう思っているのだろうか。上司や経営者は社内や社外に向けて何か発信をしているだろうか。
何も言っていない? それともあなた自身がそういう質問をしていない?

 

『Weの市民革命』 佐久間 裕美子 著

「こういうつなげ方で世界を描く方法もあるのか!」。冒頭の1章から4章まで読んで、唸らされました。著者が知人友人から聞いてきた言葉のパンチ力がすごくて、前半でかなりクラクラしました。

アメリカの今を知る」みたいな読み方もできる本です。とは言え、この本はやっぱり強い青みを帯びているので、それだけで語ってしまうのは危険だけれども。
ブログにも読書メモ書いてます: 

独立した個人として、自分のルールで生きているつもりでも、知らずに人にウイルスを渡してしまうリスクがある。そういう状況を体験したことで、自分はより大きな世界とつながっているのだ、という認識を新たにした。

 

『次世代ガバメント 小さくて大きい政府の作り方』 若林 恵 著

「嫉妬というのは、どこか近いものを感じる相手に持つものだ」と言ったのは誰だったろう。

でも、あれは嘘だね。だって、おれは若林氏を遠くの巨星のように感じているけれど、本を読んでいると何度となく嫉妬心を感じるもの。「ああ、なぜおれは若林恵ではないのだ!」って。

これまでのやり方ですと、定時で働いている人は、役所に行こうと思ったら半休を取らないとダメじゃないですか。じゃあ一体誰が営業時間内に役所の窓口に行けるのかと言えば、家庭の主婦か仕事をリタイアした方ぐらいしかいませんでしたから、そう考えると、これまでの役所では、いかに古い家族像や古い働き方を想定してサービスの設計がなされていたかがよくわかります。共働きやシングルマザー/ファーザーが珍しくもなく、働く時間や働く場所もどんどん選択的になっているなかで、より柔軟で臨機応変な対応を市民は求めているわけですから、それに応えようと思えばソフトウェアをアップデートする以外やりようがないはずです。

 

『人新世の「資本論」』 斎藤 幸平 著

「要するに」多すぎ! 「無駄な言い切り」多すぎ!!「対立構造にして煽る」多すぎ!!!

-- と、拒否感を強く感じたのも事実なんだけど、斎藤氏の言動に注目する入り口としてはこの本がちょうど良いのかもしれない。1番尖った部分を「バーン」と出して、そこから対話していこうぜって感じかしら。

時間のない人とか、ちょっと懐疑的な人は、1章と6〜8章だけ読んでもいいかも?

シングル・イシューの改革に、気候変動対策の視点を入れ込むことで、個別の問題を超えた横の連帯が生まれていったのだ。
例えば、電気代の値上げは、貧困世帯を直撃する。一方、地産地消を目指す公営の再生可能エネルギーに切り替えれば、地域経済を活性化させ、収益も地域コミュニティのために用いられることになる。当然、後者は気候変動対策だけでなく、貧困対策にもなる。太陽光パネルを設置した公営住宅を建設すれば、環境対策であると同時に、市民の暮らしの場を確保し、資本の狙うジェントリフィケーションへの抵抗になっていく。新しい地産地消型経済の活性化は、地域に新たな雇用を生み、若者の失業問題にも改善をもたらす。

 

『「あいだ」の思想 セパレーションからリレーションへ』 高橋 源一郎 & 辻 信一 著

#混ぜなきゃ危険 というキーワードを掲げているおれには、とてもたくさんのヒントがありました。

混ぜるってことは、その前に「別々のもの」があるということ。別々になってるってことはそこに「あいだ」が存在しているということ。

分離や孤立は集団主義全体主義的な癒着へと反転しやすい。この分離と癒着という両極は、「あいだ」が断ち切られ、壊れ、失われているということでは共通している

 

『まとまらない言葉を生きる』 荒井 裕樹 著

こんな文章が書けるようになりたい!! と思わせられることが年に何度かある。今年、1番大きなそれがこの本だった。

誰かに対して「役に立たない」という烙印を押したがる人は、誰かに対して「役に立たないという烙印」を押すことによって、「自分は何かの役に立っている」という勘違いをしていることがある。

 

『ニューロダイバーシティの教科書: 多様性尊重社会へのキーワード』 村中 直人 著

ニューロダイバーシティ関連のいろいろな「イマイチ分かりきれない…」みたいな部分が、かなりクリアになりました。

これを読んでいたとき、ちょうどNetflixの『ATYPICAL(ユニークライフ)』を見ていたこともおれにはちょうど良かったみたい。気づきが多かったです。

脳や神経由来の多様性が尊重される社会の実現。
それは、目に見える現象で人間をカテゴライズし、理解しようとする視点中心の社会から、目に見えない内側のメカニズムから人のあり様を理解しようとする視点中心の社会への、人間理解のパラダイムシフトという側面を有しているように思います。

 

『それを感じているのは私だけじゃない こんにちは未来』 佐久間裕美子 & 若林恵 著

「未来 led by テクノロジー」にさよならした若林氏が、もう一度未来を未来に挨拶する気になった理由がいろいろと伝わってくる3冊(上のリンクは1冊だけになっちゃってるけど)。

『Weの市民革命』や『だえん問答』で書かれている話といろいろオーバーラップしてきて楽しいです。

景色が変わるって、人の習慣だったり動き方だったり、ものの感じ方だったり、そういうことを含めて社会が変わるってこと  ジェンダー編より

企業は、自分のところのプロダクトが人々のウェルネスに貢献してますよってマーケティング的な視点ではなくて、もっと広い意味での、社員もプロダクトに関係している人たちも含めた企業体として、みんなが健やかに生きるという意味でのウェルネスを大事にしていかないといけないってこと  アメリカ編より

一部では「地方創生の聖地」とか言われていたりする。そういうところでも、よそ者がちょっと楽しくやってんな、みたいな感じが地元の人たちのあいだにはあるんだよね。分断とまではいかないけれど、よそよそしさみたいなものはやっぱり抜きがたくあるらしくて、現実には、それこそが本質的な課題なんだろうな  メディア編より

 

来年もすばらしい本にたくさん出会えますように!!
Happy Collaboration!