B Corp調査レポート - B Labが提供しているサービスと「相互依存宣言」
「パチも、ソーシャルグッドな活動を応援しようとしているのなら、ビー・コーポレーションやエスディージーのことはある程度は理解しているべきじゃないかと思うよ」--こんなアドバイスをある方からいただいたのが一月ほど前でした。
そのときは「ビー・コーポレーション?」「エスディージー??」という感じで、まったく何のことだか知らなかったのですが、その後この一カ月の間に意識していたら、なんとたくさんの人たちがB CorporationやSDGsについて語っていることか!
先週参加したイベント『Polemica - ディスラプターとマネージメントは同じ夢を見れるのか?』でも、以下のような発言がされていました:
『市場経済を中心に置いて会社をまわしてきたけれど立ち行かなくなったのが今の日本の企業。一足先にそれを経験したアメリカを爆発的な勢いで席巻しているのが「B Corporation」のムーブメント。
「ビー・コーポレーション」は「B Corporation」で、「B Corp」と略されて広く知られているものでした。興味を持って少し調べてみたところ、感銘を受けるところが多々ありました。
そんなわけで、今回はB Corpについて分かったことをシェアします。
■ B Corpの基礎とB Lab
「B Corp」とは、アメリカからスタートしたNPO団体「B Lab」が発行する認証制度で、2016年5月の段階で世界50国1,752社が「B Corp」として認定を受けています。
日本では、つい先日シルクウェーブ産業と石井造園が初のB Corp認定を受けました。
B Corpの「B」は「ベネフィット(利益)のB」を意味しており、その基準と志はとても高く、B Corp認定を受けることは労働者やコミュニティー、そして環境へ利益を与える「いい会社」であること、そして世界にとってベストを尽くそうとしている会社であることが証明されたと言えるでしょう。
B Corpに関する基礎的な情報は、Sustainable Japanさんの「B Corporation(Bコーポレーション)とは・意味」というページに大変分かりやすくまとめられています。ぜひ一度アクセスしてみることをおススメします。
■ B Labが提供しているサービス
B Corp認証を発行しているB Labが、具体的にどのようなサービスを提供しているのかを書き出します。
全体感としては、一番最初に挙げる「B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)」という無償で誰でもどんな企業でも利用できるオンラインアセスメントが全サービスの基点となっています。
そして、そのアセスメントの先に、「B Lab認定を受けた企業」向けのさまざまなサービスが並んでいるという形です。
オンラインアセスメント: B Impact Assessment - 無償サービス
B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)は、自己採点型のオンライン・アセスメントツールです。この採点結果をベースにB Corp認証を申請することになります。
なお、アセスメントには2~3時間を要するとされています(英語ネイティブ以外には7~8時間との説もあり)
認証サービス: B Corpメンバー認証 - 有償サービス(年会費は売上額に応じて$500-$50,000+)
Bインパクト・アセスメントの結果(80/200点以上)と法的要件を満たした場合、年会費を支払った上で「Declaration of interdepence(相互依存宣言)」を発することでB Corpメンバーを名乗ることができます。
B Corpメンバーとして認証されることで、ソーシャルグッドな企業でありエシカルであることを社会に宣言できると共に、いくつかのサービスをB Labから受けることもできます。
なお、年会費は9月から改定されるようです。詳細は下記ページで確認できます。 Make it Official | B Corporation
メンバー限定サービス: B Corpメンバーだけが受けられるサービス - 無償や割引
B Labやサービス・パートナー企業が、メンバー企業向けに80を超えるサービスを提供しています。細かい点が分からないところもあるのですが、以下のサービスがB LabのWebサイトなどで紹介されています:
- GIIRS(B Analytics) 投資家やファンド、企業向けにエシカルな観点からの分析を提供するサービス。「Global Impact Investing Rating System」の略
- 求人サービス(B Corp Jobs Board) B Labサイト内に求人広告を出せるサービス
- Ad/プレス: メディア「B the Change Media」 オウンド・メディア通じた紙媒体、デジタル、ライブイベントなどによるAdやプレスリリースの活用。
- CRMやERPなどのITツール: Salesforce、NetSuite、Rally....
- コンサルテーション: メンバー企業同士の相互サポート
■ B Labのネットワーク
B Labと共通のビジョンや目的を掲げる世界のさまざまなNPO/NGO団体とパートナーシップを結んでいるようです。
パートナーシップの形態にもいろいろあるようなのですが、詳細はよく分かりませんでした。いくつか、確認できた代表的なものを挙げておきます。
- Global Partners 各地域のB Lab支部的な役割り
- Sistema B 上記「Global Partners」にも含まれており、非常に近しい関係にあるが基本的には別団体
- B Team バージングループのトップRichard Bronsonがファウンダーの団体。以下のアナウンスメントが公開されています。 We Join Forces with the ‘B Corp’ Movement
■ その他、個人的な興味と感想
賛否両論を巻き起こしそうな問題を避けることなく、むしろ積極的にスタンスを共に検討しようという姿勢をとても感じました。 以下のページに出てくるキーワードを見るだけでも、その姿勢は感じられるのではないでしょうか。
Controversial Issues | B Corporation
B Labのヒストリーを紹介するページを見ていると、その見出しや記事の書き方の随所にユーモアを大切にしようとしう姿勢を感じました。
大きな目的を掲げて活動している団体にこそ、こうしたアプローチが重要なのだと思います。
Our History | B Corporation
B Corpは3人のファウンダーにより立ち上げられ、そのうち2人はバスケットボール用のシューズメーカー出身だそうです。
立ち上げにまつわるストーリーとか、かなり興味深そうなものがありそうな予感がします。
Our Team | B Corporation
まだはっきりと理解しきれない部分も多いのですが、まずは現段階で分かったことをシェアしてみました。
「情報は発信する人のところに集まってくる」ようにできているので、今後いろいろと集まってくるよう、アンテナを高くしつつ発信もまめにしていこうと思います。
最後に、とてもステキだなと思ったB Corpの掲げる「相互依存宣言」を日本語に訳してみます。
Happy Collaboration!
私たちは、グローバル経済が、良いことを実現するための力となっている社会の訪れを頭に描いています。
その経済は、目的主導型で、株主へだけではなくすべての利害関係者へ利益をもたらす、「Bコーポレーション」と呼ばれるニュータイプの企業体により成るものです
私たちは、Bコーポレーションとして、そしてこの新たに産まれた経済のリーダーとして、これらのことを信じています:
私たち自身が、この世界でそれを実現する変化となるべきである。
すべてのビジネスは人と場所を中心として執り行われるべきである。
自社の製品や実務、および利益を通じて、企業は害を及ぼすことなく、利益をもたらすことを目指すべきである。
これらを実施していくには、私たちがそれぞれ依存しあっていることと、私たち自身と未来の世代に対して責任を負っていることを理解した上で行動していくことが必要である。