Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

ハノイで社会起業家たちと考えた

 

「記事にすること、言葉にすることで、誤解を産んでしまったり、限定してしまったりすることがある。どうしてもオンラインメディアには限界がある。だからこそ自分の目で見て身体で感じて欲しい。」

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ハノイヴィーガン・レストラン「V's HOME」にて。ヴィーガン・フード初体験しました。)

 

IDEAS FOR GOOD主催の「アジア一幸せな国ベトナムの社会起業家と、本当の「豊かさ」を考える旅 in ハノイ」ツアーに参加してきました。

ベトナムで社会課題に取り組むソーシャル・ビジネス実践団体を周り、ビジネスの背景についてやそこにかける想いを聞いたり、ハンズオンをしてみたりという、「普段とは違う刺激」を矢継ぎ早に受ける濃い4日間でした。(そして、私にとっては14年振りのベトナム訪問でした。14年振り!!)

 

冒頭の言葉は、初日夜の「グループ・チェックイン」(自分が何者で、どんな期待や思いを持ってここに来ているのかをそれぞれが伝えあう場)で、ツアー主催のIDEAS FOR GOODファウンダーの加藤さんがみんなに伝えた言葉の一節です。

滞在中に訪問したりお話しを聞かせていただいたのは全部で10団体ほどとなるのですが、ここでは、特に私に響いた言葉や出来事をいくつか紹介したいと思います。

 

■ Dao’s Care

目が見えない、最高のセラピストたち。ハノイにあるマッサージスパ「Dao’s Care」 「幸せは、自分の幸せに共感してもらうこと。幸せは、自分の職業を自分で選びそこに価値を見出せること。マッサージ・セラピストが幸せなら、マッサージを受ける側にも幸せが伝わる。幸せって簡単に広げられますね。」

-- 目の不自由な人や非識字者、少数民俗や孤児…。生きることに苦しんでいる人たちに、生活を支える術としてマッサージ師の技術と心得を伝え、その過程で家族のような結びつきを生み出していく。

高品質のサービスを作り上げて、そこから生まれる幸せをみんなで分かち合う。それを真摯に追うDao’s Careのマネージメント・チームの生き方に対するスタンスは、とてもシンプルでとても力強かったです。

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(ファウンダーの一人であるチャンさん(左)は、包み込むような優しい目をしていた。)

 

■ Kilomet 109

古くからある伝統に“モダン”を。職人と若者をつなぐスローファッション「Kilomet109」 「伝統的なハンドメイドに強くこだわっているし、同じようにテクノロジーも大好きで3Dプリンティングなどもバンバン取り入れている。ハンドメイドにもテクノロジーにも限界はある。だからバランスを見ながら互いのいいところを組み合わせている。 伝統的なものを未来に残していこうと思うのなら、そこに新しいテクノロジーやアイデアを加え取り入れていくことが大事。イノベーションこそが、伝統を未来につなぐ。」

-- エコフレンドリーな素材と製法にこだわって、伝統手法を引き継いでいる職人たちと共に「スローファッション」を確立しているMs.タウとMr.ジョン。

テキスタイルの作製から販売まで全プロセスをコントロールすること、そして圧倒的なディテールへのこだわりで唯一無二の作品群を確立すること。そうやって職人に適正な給与を払えるようにすることで伝統の火を守り、スーパーハイクオリティの洋服を作り上げていました。

彼らのビジネスモデルが少数民族やエコ素材を通じた「社会的価値を守る取り組み」だということを知らない相手であっても、その技と機能美で圧倒的な価値を感じせる服たちでした。

(「これからは『ポケットの仕上がり』に注目するといいわよ』ってアドバイスもいただきました。)

 

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(石で柔らかく加工し光沢がつけられた100%Hempのジャケット。この写真の100倍カッコいい。)

 

■ Takashi Niwa Architect

世界が注目する持続可能な農業幼稚園。そのデザインに込められた、ある日本人建築家の想いとは? Visualize the Value: ベトナムの建築文化を豊かにする「種」となる建築プロジェクトを。ベトナム人が身近すぎて気づいていない、活かしきれていないValueを感じ見つけ出し、それを形にしていく。風に揺れる植物が、風を視覚化するように。
ベトナムの伝統的な竹組みによる「透け感」のあるレイヤーに、人の動きや依頼主の想い、ビジネスのオリジンをレイヤーとして重ね、景色を作っていく。」
-- リノベーション建築家・大島芳彦氏の「あなたでなければ、ここでなければ、いまでなければ」という言葉を大切に、「environment(環境) X culture(文化) X technology(テクノロジー) X material(素材) X energy(エネルギー) X emotion(感情) X activity(行動) X time(時間) X people(人びと)」を重要要素として設計・建築をされているアーキテクト、丹羽さん。

挫折を味わい医師への方向転換を考えた時期もあったそうですが、建築が人の心身に与えるパワーに気づき、医療ではなく建築の道を歩む決心をされたそうです。

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(以前のワークショップで使用されたというモットーが貼られた壁。下の模型は海へと吸い込まれていくような独創的なホテル。)


 

ほとんどのツアー工程を終えた帰国前夜の夜、「グループ・チェックアウト」(ツアーを通じて思ったことや、学び感じたことなどを伝えあう場)が行われました。そこでは、みんなが順に特に印象に残った訪問先や言葉、そして「豊かさ」についての想いを伝えていきました。

でも、私はその場では、あえて感じたことを言語化しないようにしました。

それは、私が言葉に縛られてしまうタイプの人間だから。まだ消化できていなままの「そこで見て感じたまま」を「言葉」に形どってしまうと、その後の自分の思考に枠を与えてしまいそうで。
急いで口にした言葉が、本当に見つけたかった価値と自分の間に距離を作ってしまったり、その背後に沈んでしまうことがあるって、これまで何度か経験して知っているから。

 

わたしは、価値を可視化する言葉の力を強く信じています。その力は、今回のツアーで見てきた建築やファッション、マッサージや食、伝統工芸や職人技となんら変わらない「伝える力」だと思っています。

そして、言葉にする中でこぼれ落ちる「何か」も、覚悟を持って引き受けなきゃいけないんだろうとも思っています。
今回のブログ記事では、Dao’s Careさんのように「伝えることで幸せを拡げたい」と思い、印象を言葉にしてみました。

 

今回お話を聞かせてもらった社会起業家たちのように、私も強い軸を意識してモノを書いていきたいです。

「つながりがないように見えるものをつなげる力」を身につけられるように。さまざまな要素を丁寧に重ねて、価値を可視化できるように。

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Happy Collaboration!