『ツイッター社会進化論』(金 正則 著)を読んで
メインタイトル上に「1万人市場調査で読み解く」と付いているように、2010年7月に1万人を対象にして実施した調査をベースとして、ツイッターユーザーをさまざまな観点から分析した本、『ツイッター社会進化論』を読みました。
本の背表紙にある著者紹介には、金 正則さんは生活者研究と未来予測を得意とするマーケターと書かれているのですが、なるほど純粋に社会学の観点として楽しめる本であり、同時にマーケティングの観点でもとても参考になる本でした。
(マーケティングは生活者と密接に結びついているものなのだから当たり前だと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、それを前提としても二つの側面のそれぞれでとても優れていると思います。)
ツイッターのアクティブ・ユーザー数や年齢層、地区、年収などのデータ分析も面白いのですが、ここでは個人的にもっとも面白いと思った洞察に、自分の意見を重ねてみたいと思います。
これは「会社員は実名率が低い」と読み替えてもよいかと思います。
著者の金さんは、ここから会社員が「自分を表しにくいと感じる」状況と、「多様性に向かう」という社会のメガトレンドを、ツイッターとの関係の中で論じます。
一言で表すと、「ツイッターとは"人と社会の多様性を楽しむ"ものであり、その価値を最大限にするには"人の多様性だけではなく自分自身の多様性"にも目を向けていくことではないか」と言われているのだと私は受け止めました。
「自分の興味分野にフィルタリングされた情報が早く手に入る」という情報収集だけを目的としているなら、実名も匿名も関係ないし、そもそも情報発信をする必要もなく、ツイッターアカウントを作ってフォローだけをしていれば良いんだと思います。
そうではなく、多様なソーシャルグラフやネットワークとのインタラクションを通じて自分の多様性を拡げていくことが、より一層、多様性というキーワードの重要性が増し続ける社会における自身の価値を向上していくことである、ということです。
以前、『「ビジネス・パーソンと実名制」をつらつらと考えてみる』というエントリーで、ビジネス・パーソンが実名でソーシャルメディアを使うことのメリットについて書いたことがありましたが、今回『ツイッター社会進化論』を読んで、もっと大きな視点での実名のメリットを理解することができた気がします。
ちょっと、固いトーンで書いたら慣れてないせいか疲れました・・・。
- 企業人がまず企業内の他の人とつぶやくことで最初の敷居を下げ、ツイッターをはじめやすいものにする。そして多くの企業人がツイッターに参加し、総体として企業活動を外に表現していく時代が来る、という予感がする。(『ツイッター社会進化論』116ページ)
- 多くの大企業は1アカウントにこだわらず、部門ごと、役員、もしくは社員全員が市場対話力と市場感応力が得られる環境をつくるべきだ。(『ツイッター社会進化論』132ページ)
こんな感じで、単なるデータにとどまらず、そこから掘り下げた洞察が多数あります。
良本でした。満足。あ、一応私Pachiのツイッターアカウントへもリンク貼っておきます。
Happy Collaboration!