『チームの力』を読みました - 適材適所と20%ルール
「モチベーションをいかに維持するか/させるか」は自分の中でも大きなテーマです。
よくそれについて考えを巡らたり、ディスカッションをしたりするのですが、先日読んだベストセラー『チームの力――構造構成主義による"新"組織論』(西條 剛央 著)の中の『適材適所とモチベーション』という章がとても分かりやすく、「この観点でこんなに分かりやすく書かれているものを読むのは初めてだ」と私は感じました。
すでに多数の書評がある『チームの力――構造構成主義による"新"組織論』ですが、『適材適所とモチベーション』にフォーカスして書かれているものはあまりなさそうです。
それならば…ということで、今、自分が考えていることと合わせて紹介したいと思います。
■適材適所の本質 - 関心と能力を踏まえながら、それに適合する仕事や役職を与えること
「パチはいいよな。自分のやりたいことを仕事にできているから。そりゃモチベーションも下がらないだろうよ。でも俺なんてさ…」
社内ソーシャル推進の仕事について話をしている中で、これまで何十人もの人からこう言われてきました。そのたびに自分が恵まれていることに感謝する一方で、「うーん、でも、そうじゃないときもあったよ。それでもいつもやりたいことができるように常に策を打ち続けてきたつもりだよ」と思っています。
(もちろん、運も大きな味方になってくれたことは歪めませんけどね。)
「自分のやりたいこと」を広義に捉え直してみたり、複数の側面から見なおしてみたりしながら、やりたいことの本質に迫ろうとすることが大切なのかなって今は思います。
それによって自分が魅力を感じている対象の幅が拡がって、身の回りにずっとあったのにこれまで見逃していたり、気づかないままでいた「喜び」や「やりたいこと」につながっているものを、日々の仕事の中に見いだせることもあるんじゃないでしょうか。
そんなことを感じさせてくれた文章をいくつか引用します。
引用ここから
■「一番やりたい仕事」だけにとらわれると現実的にはマネジメントできなくなるため、「人間は多様な関心を持っている」ということを念頭に置く必要がある。何かを創りだすことに"一番関心があるというクリエイティブ系の人でも、教えることにも関心があり、誰かをサポートすることにも関心がある、という人もいる(…)その人が強く関心を持っている「ベスト関心」に入る上位関心を複数把握しておくと同時に、まったく関心のない「ワースト関心」も複数把握しておく。その上で、できるだけいくつかの上位関心に沿った働き方になるようマネジメントするのだ
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■かつては適材適所だったとしても、関心、能力を含めた状況が変化する以上、将来にわたって適材適所であり続ける保証はどこにもない。"適材適所"とは一度配置したらそれでよいといったスタティックな事態ではなく、ダイナミックは采配と捉えておいたほうがよい。すなわち、「(1)うつろいゆく関心と(2)能力と課題のバランスといった二つのポイントを見定めながら業務内容を調整すること」、これが"適材適所の原理"
◇
■水は高いところから低いところに流れる。重力という自然法則に沿って、自然とそうなる。それと同じように、「関心を充たしながら生きたい」という人間の本質に沿っていれば、人は楽しんで仕事に取り組む。しかし、その本質に沿っていなければ、水を低いところから高いところに引き上げる必要が出てくるため、ポンプのような特殊な装置が必要になる。それがお金(賃金、報酬)といった外発的動機づけの装置でもある
引用ここまで
■グーグル20%ルールの本質
「よくへこたれずに続けられましたね。認めてもらえなかったり、ヘタしたら邪魔されたりすることもあったわけでしょ?」「飽きたり嫌になったりすることもありますよね?」 これも、「社内ソーシャルの推進」の話をしている際に、たくさんの人から何度となく聞かれた言葉です。
もちろん、やらかしちゃったり失敗したりして落ち込むこともあれば、「今日だけで何回この話をしているんだろう…」なんて一時的に嫌になる瞬間はあります。
でもね、元々の関心が強いところな分、感謝や励ましなどのポジティブなフィードバックを貰ったときの喜びがすごいんですよ。
やっぱり人って、たいして興味もないけどやってみて上手くいったり褒められたりしたときと、自分が情熱を持っていることをやって成功したり感謝されたりしたときとでは、満足度がぜんぜん違いますよね。
人にとっては成功と呼べないようなちっぽけなものだろうと、自分の励みになるものならなんでも味方にしていくことが大事だと思います。
周りを見渡せば、モチベーションを下げようとするヒト、モノ、コトが溢れている世の中じゃないですか?
私はできるだけ「やる気を削ぐ」そいつらから距離を取ろうとしています。そして逆に、自分のモチベーションを高く保ってくれるヒト、モノ、コトを大事にしています。
ところで、モチベーションについて語られるときによく引き合いに出されるのがグーグルの「20%ルール」ですよね。
それについて書かれている部分でも「なるほどそうだよね」と感じるところがありました。最後にその部分を紹介しておしまいとします。
引用ここから
■「この経験を通じて、どのチームも失敗が許容されることを学ぶ」というのだ。そして20%ルールの最も重要な成果は、「新しい試みに挑戦する経験を通じて、社員が学ぶことだ」(…)つまり、20%ルールは、イノベーティブなアイデアを世に送り出すための仕組みだが、確率論的には画期的なアイデアが出てくることは稀である。しかしそれでも、その経験を通してエンジニアは必ず成長することから、「社員教育プログラム」としては必ず成果があがるというのである。
◇
■ただし、通常の業務についても一定の生産性目標が定められており、「実際には夜や週末を使って「20%ルール」のプロジェクトをする社員も多いので「120%ルール」といったほうが妥当かもしれない」と述べているように、実質的にはプラス20%となっている側面がある。しかしそれでもなお、それがおもしろいと思えるものなら、それが活力となり他の仕事もがんばれるようになることはあるだろう。
◇
■大事なことは、20%ルールそれ自体ではない。やりたいことをやれる環境を具体的に整えること、仕事に集中できるフロー状態に入れる環境を整えることだ。そしてそのために、各自が自分のチームの状況を踏まえて、実効性のある方法を考えることが最も大事なことなのである。
引用ここまで