読書とセミナー。図書館とワークショップ
■ セミナーとワークショップ
講義形式のセミナーと、グループワークを中心としたワークショップ、みなさんはどちらが好きですか?
テーマそのものや参加目的によっても変わってくるとは思いますが、もし、同じようなテーマで、参加条件もほぼ同じだとしたら、皆さんはどちらに参加しますか?
好みの問題はまた後ほど触れるとして、セミナーとワークショップには、それぞれが持つ特質に大きな違いがありますよね。
その際たるものが、「必要な時間の長短」と「お試し参加の可否」だと思います。
- セミナー - 各コマ(セッション)の連動性が低く、部分参加可能でも問題ない(途中離脱や参加が周囲に与える影響低い)
- ワークショップ - 各コマ(セッション)の連動性が高く、全体参加が前提(途中離脱や参加がグループワークやペアワークに与える影響大)
言い換えると、「最初の10分出て面白かったらそのまま参加しよう。ダメなら場所変えて一仕事しようかな…」なんて、カジュアルに参加(あるいは参加表明)できるのがセミナーだと思います。
たとえ有料セミナーであっても、「これは違う」と思ったら、そこに残って過ごす時間はサンクコストとなるので、私は退出します。
一方のワークショップは、あらかじめ時間が一続きに近く、途中離脱が周囲に与える影響の大きさも分かっていることから、参加表明の段階で覚悟を求められますよね。
こうした違いや特徴は、わざわざ書き出さなくてもきっと皆さん感じていることだ思います。でも、これが参加者、あるいは参加検討者の「どちらが好みか」に大きな影響を与えていると思うのです。
「セミナーが好き」という方、その理由は「いつでも離脱できるから」ってところはありませんか? 「無駄な時間を過ごすリスクが低いからセミナーの方が好き」みたいな。
でも実は、「あれ、なんか期待と違う…」というときに取れるアプローチの幅が広いのが、ワークショップですよね。
「ワークショップは参加者みんなで一緒に作り上げるもの」とよく言われるように、「退出」や「我慢」をするのではなく、積極的にファシリテーターや主催者、あるいはペアやグループのメンバーに「自分が感じている違和感」を伝えて、自分が期待していたものや方向を伝えてズレを調整するチャンスはワークショップのほうがはるかにが大きいです。 (とは言え、もちろん伝えたところで調整がうまくいかないことや、また新たなズレを生み出すこともありますが、それはまた別の話ということで。)
ただ、個人的には、「セミナーのように気楽に、カジュアルに参加できるワークショップがあればいいのにな」というのは前から感じているところです。
「最初の2時間しか出れなくなってしまった」という人や、2時間遅刻しちゃいましたという人とか、はたまた「通りがかりなんだけど、面白そうだから今から参加できませんか?」というような、そんなフラッと出入りできる雰囲気と、役割がデザインされているワークショップがあれば面白そうだと思うんだけど…。難しいですね。 (一方で、「最後のほうに来て、仕上げのアウトプットにしたり顔でコメントしてるこの人いったい誰? 何様?」と思うことも実際にあるのし。)
■ 図書館とアイデア出し
なんだかすっかり「ワークショップ論」みたいになってしまったのですが、昨日、『働き方の未来をデザインする 未来の働き方を変える図書館』という株式会社イトーキ オフィス総合研究所さん主催のワークショップメインのイベントに参加してきました。
午前中からバタバタしていて、5分くらい遅刻しての到着だったのですが、その午前中にいろいろと考えていたのが上に書いたようなことでした。
イベントは前半の約2時間が、3名のイノベーターによるインスピレーション・トークで、後半の約2時間が、最後のスピーカーでもあるミラツク代表の西村さんファシリテートによる「図書館で社会課題を、あるいは社会課題を図書館と解決するためのアイデア出し」ワークショップでした。
インスピレーション・トークが面白くて、たくさんメモも取ったのですが、ブログで短く紹介するのが難しい…。
ということで、自分の中で「これは忘れたくない!」というキーワードとそれにインスパイアされて頭の中に渦巻いていたことを書き出しておきます。
■ 世界のいろいろな新しい本、図書館
- 飲める本: 1ページあたり約100リットル、1冊で4年分の水を浄化できる本
- 読書啓蒙のための電車の乗車券になる文庫本
- 偏見を受けやすいマイノリティーの人などを「生きている本」として貸し出すヒューマン・ライブラリー
- 壁紙にケータイをかざすと最初の10ページをダウンロードできる地下鉄図書館
The Underground Library from Keri Tan on Vimeo.
■ スーパーマーケットと図書館
スーパーマーケットは、ワクワクやハプニングとは縁遠い「機能分類」「集中管理」「マニュアル化」の世界。どこか図書館と似ている…。いや、そもそも図書館や博物館が生まれてくる仮定で、機能分類して展示方法を管理し、マーケティングとマニュアル化を進めていったという順番ではないか?
つまり、図書館こそが「機能分類」「集中管理」「マニュアル化」のルーツではないのか?
その対極にあるバザールは、怒りや諦め、喜びや楽しみが色濃い世界。いわばハプニングの世界で効率性とは犬猿の仲。
効率性を捨てる勇気を持ち、捨てることの正当性を周囲に飲み込ませることができるか。「バザールに行きたくさせる」のは難しくない。難しいのは「日常的にバザールに行きたくさせる」ことだ。
■ 拡散と集中。エッジと共感
たくさんのアイデアを出せば、凡庸なものが増えて行き平均点は下がっていくのは当然。でもわずかながら飛びぬけたものが出てくる可能性も増える。
重要なのはその後の集約モード。何人もが出している似たようなアイデアではなく、他のどれとも違う尖った1つを見つけることが大切。そのプロセスを繰り返してさらにエッジと共感を磨いていく。
いろいろと図書館のことを考えていたら、帰り道にふっと頭に浮かんだことを最後に書きます。
読書ってセミナーに似ているな。って。
パラパラっと数ページめくって「やっぱり違うな」って何度か繰り返したり、いつの間にか引き込まれて、でも、基本的には自分次第で時間を細切れにしたり。
じゃあ図書館はワークショップに似ているかな?
きっと、今はまだ似ていない。でも、昨日のワークショップででてきた図書館のアイデアたちは、どれも問題点や違和感を掛け合わせたりつなぎ変えたりしながら、アイデアやそこに関わる人たちをつなげて何かを生み出す、ワークショップに似てきそう。