Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

『ビッグ・ピボット』読書メモ: どちらが●でどちらが■なのか。

ソーシャルシフト・ラボで行動を共にしている萩谷さんのブログ記事『"暑い、足りない、隠せない" 時代の新経営原則』を読み、おもしろそうだし学びが多そうと『ビッグ・ピボット―なぜ巨大グローバル企業が〈大転換〉するのか』を手にしました。

 

どんどん暑くなるから、クリーンなビジネスが勝つ いよいよ資源が足りなくなるから、イノベーションが勝つ なにもかも見えてしまうから、隠さないものが勝つ

 

本の骨子を簡単に紹介すると、どうすれば企業は上がる一方の経済的、社会的、環境的、政治的な掛け金に対応できるのか。

「迫りくる異常気象」「逼迫する資源」「否応なく求められる透明性」という直面せざる得ない現実の脅威を、どう逆手に取ればレジリエントで強靭な組織を作り上げることができるかが説かれた指南書となっています。

もっとベタな言い方をすると「これだけ世界が変化スピードを上げて様々なものが急転している中で、いつまで余裕こいてるんですか? 早くやるべきことに手をつけないと、負けて退場を余儀なくされまちゃいますよ。もうすでに結果を出している企業が一杯あるから、その戦略を10個にまとめて教えてあげます」という内容です。

 

10個の戦略はそれぞれ端的にまとめられていて、エコビジネスやサステイナビリティ戦略、CSVについて歯抜けな知識しか持っていない私のような者にとっては、ポコポコトそこかしこに空いていた穴を埋めてくれるものでした。 (ただし「ロビー活動」については、自分の日常からあまりに遠すぎてきちんと頭に入ってきませんでした)。

 

以下、もくじに記されている10の戦略です:

  1. 短期的成果至上主義と戦う―ユニリーバCEOの決断
  2. 科学的根拠のある大きな目標を立てる―フォードの目標「燃費二倍アップ」は必要条件だった
  3. 異次元のイノベーションを追求する―水なしで服を染めるアディダス
  4. 社員全員を巻き込む―ボーナス査定の基準を変えたウォルマート
  5. ROIを再定義する―社内に炭素税を課すマイクロソフト
  6. 自然資本に価格をつける―プーマの環境損益計算書
  7. ロビー活動を変える―ビル・ゲイツ、ジェフ・イメルトの主張
  8. ライバルをパートナーに―なぜコカ・コーラペプシコは協力したのか
  9. 消費者に「気付き」を仕掛ける―印刷量を減らして利益を生むゼロックス
  10. レジリエントで脆弱性のない組織へ

 

随所で繰り返されるのは、「一体いつまで”グリーン/サステイナビリティ戦略って、本当にビジネスの役に立つわけ?”という問いにしがみついている気なのか!」という、ときどき私自身の内側からも聞こえてくる「そもそも論」に対する答えです。 そして、「じゃあ個人レベルで何ができるっていうのさ」とか「もうどうせ今さらジタバタしたって…」とか、そうした苛立ちや諦めやニヒリズムに、真正面から指を突きつけてきます。

 

いくつか「そうか、そうだよ。そりゃそうだ!」と口にしたくなった部分を引用します。

 

■ 気候変動の正しい理解が難しい理由

一番難しいのは、責任の所在も、その影響も、地球上に住む70億人のあいだに分散されてしまっているため、何かこうどうを起こすとなると、あたかも自分たちだけが犠牲を払っているように感じてしまうことだ。そして正直に言うなら、我々は誰しも自分だけが犠牲になるのは勘弁してほしいと思っている。

 

■ どちらが○でどちらが□なのか

「アンダーソンさん、私はビジネス・スクールの学生です。私の先生に、サステイナビリティの真に何たるかを理解してもらうにはどうしたらいいでしょうか」 アンダーソンの答えは、実にシンプルだった。「まず丸を描いて、その中に四角を書いてごらんなさい。そして先生に、どっちが環境で、どっちがビジネスかを聞いてみるといい」(レイ・アンダーソン: インターフェイス創業者)

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■ 70億分の1に過ぎないことの意味

「私が個人的にエコな洗剤を使ったりハイブリッド者に乗ったりしたとして、実際何か変わるの?」(…)「君は70億分の1に過ぎないんだから、実質的には何も変わらない……でも、もちろん大きな意味がある」(…)インパクトを与えられるのか与えられないのか、というおかしな二分法でものごとを考えようとすると、全体像がつかめなくなる。

 

■ ビッグ・ピボット実現に立ちはだかる最大の障害

おそらく、ビッグ・ピボット実現の道程に立ちはだかる最も大きな障害は、短期的成果至上主義でも、価値評価の実態との乖離でもない。最も大きな障害は、ビッグ・ピボットを成しとげることができるという信念が我々に欠けていることなのだ(…)早く始めれば始めるほど、その変化はたやすくなることにも気がつかなければならない。巨大タンカーで大洋を航海するとき、航海の早い時点での小さな方向転換が、最終的にどの大陸にたどりつくかを決める。  

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あまりに近過ぎて、それが視界いっぱいを覆ってしまうと、それを見ることはできません。その価値を理解することもできません(魚の目に水見えず人の目に空見えず)。

Happy Collaboration!