Collaboration Energizer | #混ぜなきゃ危険 | 八木橋パチ

コラボレーション・エナジャイザーとは、コラボレーションの場を作り、場のエネルギーを高め、何かが生みだされることを支援する人

『チームのことだけ、考えた。』を読みました - 額面上の多様性とお試し制度

私は、サイボウズという会社のファンです。
より正確には、サイボウズのオリジナリティーに溢れた人事制度のファンです。 「6年間育児休業」とか「ウルトラワーク制度」「育自分休暇制度」などなど、いろ世間でも話題になったので知っている人も多いと思いますが、どれも多くの企業が「いいアイデアだけど、実現するのには越えなきゃいけないハードルが多そう…」としり込みしそうなものを、実際にやっているところがステキだなと思っています。
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私は、社長の青野 慶久さんのファンです。 物腰が柔らかそうで実は骨太、感性主義っぽく見えて相当理屈っぽい青野さんのファンです(すいません、勝手な想像です…)。 これまでなんどか青野さんが登壇するイベントに足を運んだり、インタビューや対談記事を読んでいるうちに、青野さんの「ワークスタイル」や「チーム」に対する考え方やスタンスにとても共感しました。   そんなわけで、青野さんが書かれた『チームのことだけ、考えた。』 は、読む前から「たくさんの共感ポイントが書かれているんだろうな」と思っていましたし、正直「すでに十分知っていることばかりだろうから、読まなくてもいいかも?」なんて気持ちも少しあったのですが、まさかこれほど何度も頷かせさせられることになるとは…!
 
そしてちょっとズルいのですが、読んでいて嬉しかったのは、普段私が口にしていることと同じようなことがたくさん書かれていることです。
私がどれだけ力説しても話半分で聞き流されてきたことも、社長としても文化人としても強い影響力を発揮している青野さんが書いてくれたことで、今後はもう少し聞く耳を持ってもらえるかも…なんて気持ちも抱きました。  
すでにたくさんの書評がWeb上にアップされていますので、本全体についてはそれらのものを読んでいただくとして、ここでは私が「よくぞ言ってくれました!」と強く思った2つにフォーカスして書こうと思います。
   

■ 多様性

 

ダイバーシティ経営では、現在の自社は画一的で多様性(ダイバーシティ)が欠けていると考えるところから始める。そこで、女性の管理職比率を高めたり、外国人の採用数を増やしたり、英語を公用語にしたりしながら、組織の中に多様性を作り出そうとする。この発想では、「日本人」や「男性」は1つのカテゴリであり、多様性のない塊として扱われる。経営者が意図するダイバーシティの完成形を目指し、号令とともに推し進めるこのやり方には、多様性とは異なる画一性を感じる。

今、目の前にいる従業員がそもそも1人1人まったく違う存在だと考え、彼らの個性を制限している障壁を取り除いていく。すでに社員は多様であり、それを一律的な規則で働かせるのをやめるだけである。その結果、今いる社員がより自分らしく働けるようになる。そして、以前は受け入れられなかった人を採用し、活躍の場所を作れるようになる。言葉としては、ダイバーシティよりもインクルージョン(包括性、一体性)に近い。個性を受け入れる力だ。

多様性を受け入れるということは、まったく違う環境で育ち、まったく違う経験をしてきた人たちを受け入れるということだ。そんな「違う」人たちが協力して働く。チームでワークする。まず、せめて嘘はやめよう。

「外国人に「もっと日本人のように振舞うように」と指導したり、女性管理職に「従来の男性管理職と同じようにやるように」と求めたり…。
そんな、発揮されることのない「額面上の多様性」だけ集めたって、なんの意味もないしイノベーションに寄与するわけもないですよ! …と、つい熱くなって相手かまわず言い切ってしまい、周囲にドン引きされることがときどきありました。   これからは、青野さんの言い方を参考にさせてもらいます。 そして「個性が存分に発揮されればそこにはダイバーシティーがついてきます」「考え方や働き方の多様性を認め尊重しあう関係性を作りましょう」という言いかたで、場作りの重要性や、それを率先して体現する社員を応援することの重要性を伝えていこうと思います。
 

■ 制度

 

制度を作るとともに、制度を活かすために、企業の風土を変える必要があるということだ。風土とは、メンバーの価値観である。この組織において何を大事にするか、という判断基準である(…)制度は目的のための手段に過ぎない。目的に沿って使われないのなら制度は必要ないことをメンバーの共通認識とした。

制度を作るプロセスに参加した人は、制度の目的を深く理解し、どうしてその制度に落ち着いたのかを説明できる。自分の意見が反映されていれば、なおさら思い入れが深くなる。しかし、そのプロセスに参加していなかった人にとっては、新しい制度ができたこと自体が青天の霹靂になる。

「効果が薄かったり、悪影響が大きければ、取り止めて前のやり方に戻します」(…)我々は、制度を細かく決めなければ開始できないと考えがちだ。しかし、「問題が発生したら議論して解決しましょう」という相互の信頼関係があれば、細かいことを決めずにスピーディにトライできる。全員の意見を聞き、山のような細則ですべての穴をつぶしにかかるよりも低コストである。

「制度は目的のための手段に過ぎない」という言葉はとても重要で意味深いものだと思います。
考えることを止めてしまうと、制度が何を目的としたものだったのかを忘れてしまったり、気がつけばそもそもそれについて考えたこともないままに今に至っていたり…なんてことありますよね?   一方で「目的」だけを凝視し続けていると、そこへの距離感や周囲の景色がぼやけてくることがあるのも事実です。 そして同じ目的を見ていても、人によってルート取りやそこに至るプロセスに対して異なるイメージを持っていることも珍しくありません(多様性のある組織であればむしろ当然かと)。   だからこそ、「一度決めたらそう簡単には変えられないもの」と捉えて最初から完璧な制度を作ろうとするやり方には無理があります。 「ダメなら変える。あるいはやめる。その判断をできるようにするためにも、まずは試してみる」--このスタンスを明確にし、フィードバックを求めながら実践することこそが、社内制度に求められているものだと思います。     本の中には2ケ所ほど、青野さんの考えに同意できないところもあったのですが、それはいつか、ご本人に直接伺える機会まで取っておこうと思います。 最後にもうひとつ。本の終わりに書かれていた一文を紹介します。

我々は長い間、個人戦に慣らされ、チームワーク・リテラシーが低いまま大人になっていく(…)競うことが悪いわけではない。競いたくもない共通種目に駆り出されるから楽しめないのだ。もっと個性的でいたい。そして団体戦をしたい。1人1人の多様な個性を活かした団体戦。それがチームワークあふれる社会だ。

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Happy Collaboration!